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週刊金曜日 9月19日号
特集 自民崩壊
民意に背き日本を不幸にした張本人
自公“合体”政権の末路
白川勝彦・元自民党衆議に聞く
足かけ10年に及ぶ自公連立。この間に公明党批判をし、自民党を離党した白川勝彦氏は「日本を不幸にした元凶は自公“合体”政権だ」と強調する。自民党の瓦解が明瞭になった今、自公政権の末路にもの申す。
─ 福田政権放棄劇で自民党の崩壊が始まったとする言説があふれていますが、あなたは、自民党自体はすでに一九九三年(総選挙での過半数割れ)で事実上終焉し、九九年以降の政権は自公“合体”政権だと指摘しています。
そうです。福田辞任は自民党だけの問題ではなく、自公政権が崩壊するかどうかギリギリのところにあるということです。今の政権は1999年以降、自白公、自公保そして自公と変化してきましたが、公明党だけは一貫している。連立というのは普通、選挙結果を受けて組むものです。しかし自公においては、そもそも選挙の際に公認の調整や選挙人名簿の交換までしているわけですから単なる連立政権ではない。私がぶ口体こ政権と呼ぶゆえんです。昨年の安倍(晋三)政権を受け入れたのも公明党だし、参院選の歴史的惨敗は安倍一人の責任ではなく、当然ながら公明党の責任でもあるんです。
まだ命脈は尽きない
(写真: 福田改造内閣発足で党首会談に臨む公明党の太田昭宏代表(左から2人目)と福田康夫首相。この1ヵ月衡こ突然の辞任劇が……=2008年8月1日 首相官邸。(写真提供/共同通信、年表の写真も))
─ そして今回の一年以内での二期連続政権放り出し。
安倍退陣のときこそもっと真摯にやるべきだったが、福田首相を選んだ時点で自公はもう政権構想力をなくしていたと私は見ました。案の定(福田辞任は)こうなった。その後の自民党総裁選では麻生太郎氏が本命などと言われているが、あの人は安倍政権の幹事長として安倍の続投を支持した人ですよ。その人がまた今回の総裁選に出る。党として何の総括も検証もしていないということでしょう。こうした自公“合体”政権の本質を見ろと言いたいですね。
─ その自公“合体”政権の最大の問題は何だったのか。そして今、この政権の命脈は尽きたということなのでしょうか。
政教一致の公明党には依然として国民の強い違和感があります。世論調査でも国民の半分以上が「好ましくない」と答えていますね。この党に対する政治的な胡散臭さは国民の間に今でも根深くあります。そうした政党と一緒に選挙をやること自体がまずは問題でしょう。次に、自民党という政党は主義・主張よりは国民の合意を重んじてきた面があります。3%の消費税を導入するのに10年をかけてきた。しかし、いわゆる小泉改革以降、労働者派遣法や年金・介護、郵政民営化など国民の合意を得ない、意に沿わない政策を次々と打ち出してきました。安倍前首相の「憲法改正」などはその典型でしょう。世論を見ると、九条(戦争放棄)は国民の過半数が支持しているのに、安倍前首相はその過半数を敵に回しても変えると意気込んだ。さらに福田になって、道路特定財源の暫定税率を復活させたり、インド洋での給油支援の継続など、生活が苦しい国民の声を無視して次々と国民の望んでいないことをやる。「生活を守れ」と国民は声を上げているのに、怒りを買うことばかりやるわけです。「平和と福祉の党」という看板を掲げている公明党もまた、一緒になってそれをやってきた。見事にその看板をかなぐり捨てたと言えるでしょう。しかし、命脈が尽きたと見るのは時期尚早だと思います。
─ と言いますと?
自民党という政党は政権を失うと瓦解するので、なりふり構わずあらゆる手を打ってくる。15年前の細川(護煕)政権のときに経験済みですからね。今の総裁選のバカ騒ぎを見ればわかるでしょう。また、自公“合体”政権には強力なマスコミ対策のプロがいて、第四権力と言われるマスメディアに対してかつてないほど強い影響力を持っています。私は太平洋戦争時と同じくらいのマスコミ支配をしていると思いますよ。マスコミ対策抜きに選挙は勝てません。多くの学会芸能人もいますし、彼・彼女らなしではテレビ番組自体が成り立たないのではないでしょうか。新聞もテレビも公明党を真正面から批判できません。こうした状況を甘く見てはいけませんよ。
体制内造反がカギ
─解散総選挙による政権交代の可能性も取り沙汰されていますが。
確かに政権交代の可能性もあります。しかし、政権甲立というのは一種の革命です。レーニンは、革命の起きる条件として(1)時の政権がやっていけなくなったとき(2)国民がこの政権ではダメだと認識したとき(3)体制内の人間もこの政権ではダメだと思ったとき ─ の三つを挙げています。日本の場合、今やマスコミも「体制内」に組み込まれており、今の自民党総裁選の報道を見る限り、見放すどころか協力・支援を惜しまない。自民の、自民による、自民のための「選挙の顔を作るための総裁選」を連日報じています。すでに自民党の中では2000年秋の「加藤(紘一)の乱」以後、いわゆるリベラル派は自公“合体”政権によって殲滅されました。私が自民党をさったのもそのためです。
先ほどの革命三条件のうち、(1)と(2)の条件は整っていますが、今言ったように問題は(3)です。体制内造反はまだ起きていないと私は見ています。しかし、次の総選挙はまさに「源氏か平家か」を決する重大な決戦になります。ただ、民主党をはじめとする野党の攻め方は稚拙ですね。過半数をもらえば道路特定財源の暫定税率はなくし、後期高齢者医療制度は変える、インド洋での給油支援はしない、この三つは責任を持ってやると訴えればいいと思いますね。そして、最後は体制内造反が起きるかどうか。それによって情勢は大きく変わると思います。(一部敬称略)
聞き手・まとめ/片岡伸行(編集部)
しらかわ かつひこ・元自治大臣。63歳。公明党批判の先頭に立ち、2000年の選挙で落選。01年2月に自民党を離党。弁護士。
* 1950年から2008年にかけての歴代首相と主な出来事を記した政治年表あり