HOME > 白川文庫 [l] > カツヒコ・アラカルトTOP[f] > ごごばん! デイリースペシャル > 2011年8月30日 (第30回)
ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2011年8月30日 火曜日 (第30回)
テーマ
「敷金問題と最高裁の判決について」
話者名 | 話の内容 |
---|---|
上柳 | ラジオの前のあなたの「法律の問題」についてお話をうかがいます、「ごごばん!法律クリニック」。スタジオには、お馴染み「白川勝彦法律事務所」所長、弁護士歴39年の、白川勝彦弁護士です。今週も、宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくどうぞ、お願い致します。 |
増山 ・堀 | 宜しくお願い致します。 |
話者名 | 話の内容 |
---|---|
上柳 | 今週もまた、これは色々、みなさんが直面する問題だと思いますよ。さっそく、ご紹介致しましょう。匿名の女性からのメールです。 |
増山 | マンションを借りる時に、大家さんに預ける敷金について質問です。ここ数年、敷金をめぐってのトラブルが報道されたりしていますが、私も以前から、敷金って何? と思いながら過ごしていました。結局は分からないまま、言われるままにしていましたが、そもそも敷金とはどういうものなのでしょうか? |
上柳 | この、敷金ですとか礼金に関して、裁判があったり、関東と関西じゃ習慣が違ったり … 色々、白川弁護士も聞きますよね? |
白川 | 今日は、敷金に関する説明と同時に、よく最高裁の判例とかっていいますが、判例とは一体何なのか、その2つの事を勉強したいと思います。 ちなみに今年の3月、敷金をめぐるトラブルがあちこちありまして、そして判決が出たんです … 3月24日に。新聞の見出しは、こうなってます。 「敷金から修繕費が高すぎなければ有効」と、書いてあるんですね。そうすると、『敷金から修繕費を引くのは有効だという判決が出た』と思うんですよね。ただ、判例というのは、どういうケースについて、最高裁がどういう風に判断したかということを良く調べないと、実は、判例を正しく解釈したことにはならないんです。ところが、良く知らない人は判例の文字だけを取り出して『最高裁はこう言ってんだ!』と。 じゃあ、どんなケースか。とくに、関東の人が放送を聞いてますよね。どういうケースについて、最高裁が『これは違法じゃない、有効ですよ』といったか、ケースを申し上げたいと思うんですね。 ある男性が、マンションを借りました。家賃は9万8千円です。ちなみに、敷金は40万円払いました。東京では考えられないじゃないですか。4ヶ月ということですよね、おおむね。そして、1年9ヶ月くらい住みましてですね、その40万の家賃から、21万円を引かれたんです。 |
上柳 | 敷金40万から21万引かれた? …… 修繕費かなんかですか。 |
白川 | 21万引かれた。だから、21万返せという訴訟を起こしたんです。それに対して最高裁は、敷金から一定の額を差し引いてもよろしいという契約がある以上、このケースに限っては違法とはいえない… |
上柳 | 『このケースに限っては』なんですか? |
白川 | そもそも判例というのは、あらゆることに対して『こうです!』というわけではなく、あくまでもある訴訟に関して、ある裁判所がこういう風に判断しました ── それで、同じようなものが積み重なっていけば、一般的にこういう風になってると言えるけども、あくまでも、『この判断に関してはこうだ』と。だから、東京ではないんじゃないでしょうかね … 家賃9万8千円に対して、40万も敷金を払うというのは。 関西は高いんですよね、敷金が。その代わり、関西はよく礼金は無いと言います。ですから『一定額引きます、期間に応じて』と、書いてあるんですよね。 東京の場合、昔、僕が借りた時はだいたいこうでしたね。上柳さんどうでした? 敷金1、礼金1、前家賃1、と。それでいいかなと思うと『待って下さい。私の手数料…』といって、業者さんに1ヶ月取られましたよね。4ヶ月って結構、若いころは大変でしたよね。 |
上柳 | それは大変でしたね、引っ越しは…。考えちゃいました。 |
白川 | だから、4ヶ月って高かったんですけども、敷金・礼金、それから前家賃、仲介手数料 ─ みんな、性格違うんですよね。礼金と言うのは、文字通り礼金ですよね。 ただ、今はもう礼金ってだいぶ少なくなってるんじゃないでしょうか? 今は。もう借り手市場というか、不動産が余ってますからね。礼金まで払って貸して下さいという時代じゃないもんだから … 前家賃というのは分かりますよね。 |
堀 | 前家賃というのは、2ヶ月分とか? |
白川 | 普通、1ヶ月じゃないでしょうね。2ヶ月…ありますかね。要するに、代金をあらかじめ払いますよ、と。出る時に、末に払いますというのがありますから。 この場合、家賃というのは、あくまでも月の初めに払うか、後で払うかという話ですよね。業者への仲介手数料は、文字通り仲介手数料ですから。そうすると、残りが、月1とか2とか言われた敷金じゃないでしょうか。いずれにしろ、多くたって2ヶ月じゃないでしょうかね? 関東の場合は。 さっき話したような、とても、9万8千円に対して4倍の敷金を払えとは言われないんでしょうかね…と思います。 ですから、この最高裁の判例と言うのは、こういう関東のようなケースじゃなくて、関西にある、ある程度高額の敷金を払って、そして一定額を払うという、そういう契約がある場合 ─ これを、専門用語では敷引契約なんて呼んでるようですが ─ そういう敷引契約があれば、それは『その通り、よほど高額でない限り、法律上は有効ですよ』ということをいったケースなんですね。 |
上柳 | 21万円取られたというのは、別に高額ではないという判断ですね。 |
白川 | だけど、関東の人から見たらどうでしょうか。ちょっと、21万取られたら大変ですよね。 |
上柳 | 『そんなに修繕費かかるのかな』って、思っちゃいますよね。 |
白川 | ただ、これは修繕費じゃなく、『一定額引きますよ』と。ところが、東京の敷金はですね、そっちじゃなくて文字通り、一種の保証金なんですね。 ひとつは、家賃を払わなかった場合の保証金ですよね。前家賃でしょ。それで、敷金1ヶ月分もらっておけば、仮に2ヶ月家賃払わなくても、家主さんとしてはある程度確保できるじゃないですか。3ヶ月払ってくれないと、1ヶ月損しますけど。 だから、関東の敷金というのは、主として、家賃の未払いで取れなくなることを防止するというところに目的があるんですね。 |
上柳 | 補てんに使うみたいな。 |
堀 | 敷金って、後で返ってくるんでしたっけ? |
白川 | …と、いうことですけどね。 ただ、関東の場合は、とられるケースもあります。僕なんか、すごくたばこ吸いますから、僕が住んでたら、クロスなんか真黒になりますね。 『あなた、たばこ吸ってこれだけ真黒にしたんだから、これはクロス代ね、1ヶ月分かかりますよ』と。ただ、その場合僕は、敷金に書いてなく、禁煙ですよと書いてあったら『それは違うだろ』と。たばこ吸うのは、通常の使用料金なんだから、ということですね。通常使っていれば、古くなるじゃないですか。 そういう風に、判例というのは、敷金は有効だとか無効だとか、言葉だけが大事なわけじゃなくて、どういうケースについてどのような判断を下したかというのが、一つの判例ということなんですね。 |
上柳 | 特に、この場合は地域の問題というのもあったようでございます。お時間になりました。白川弁護士でした。どうもありがとうございました。 |
白川 | どうもありがとうございました。 |
増山 ・堀 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー / 堀ちえみ氏 = タレント曜日パートナー (文中敬称略) | 第29回 | TOP[t] | 第31回