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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2011年11月1日 火曜日 (第38回)
テーマ
「自己破産のメリット・デメリット」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日は、ごごばん!リスナーのあなたの「法律の問題」についてお話をうかがう、「ごごばん! 法律クリニック」。スタジオにはお馴染み、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴39年の白川勝彦弁護士です。今週もどうぞ、宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくどうぞ、お願いします。 |
増山 ・堀 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | では早速、今日のご相談内容です。今日は、匿名の方、男性。43歳の方からのメールです。 |
増山 | 今、大きな借金を抱えています。新しく人生をやり直すために自己破産を考えていますが、自己破産をした時のメリットとデメリットを教えてください。自己破産をすると、家や家財道具を差し押さえられたり、戸籍にその事実が記載されてしまったりするイメージがありますが、本当でしょうか? |
上柳 | 自己破産という言葉は、やっぱり強烈なインパクトをもつ言葉ですから、色々なイメージをお持ちと思いますけど…。これは、専門家の白川先生にお話を伺っていきたいと思います。まず、自己破産。色々整理の方法が、3つくらいありましたよね。任意整理とか、個人再生でしたっけ? あと、自己破産。3つあるわけですけど、この自己破産、どういうものなのか。任意整理と、どう違うのか。この辺りから、お話を伺いたいんですけども。 |
白川 | そうですね、自己破産という言葉は、僕も司法試験の勉強したりするときは知らなかったです。今は、みんな自己破産という言葉知ってるでしょ? 破産という言葉は昔からありますけども、今ほど自己破産、自己破産なんて言いませんでしたね。自己破産 ─ 自己で、破産を申し立てるということですね。 他にもあります。何があると思いますか? 債権者が申し立てる破産もあります。と、いうのは、一部の債権者が好き勝手強引に持っていくかもしれないから、それを止めるために、債権者があるものは平等に分配しよう、と。債権者破産というのもあるんです。 それに対して、昔は債権者破産がほとんどだったんです。 ところが今、債務を持っている人が、自ら破産するという ─ それで、自己破産。自己破産という言葉が、特に流行ってますよね。昔は、どっちかというと債権者が破産を申し立てますね。 |
上柳 | お金を貸してる人が「ちょっと待ってー! ダメ、みんなで勝手に持ち出さない! みんなで分けるよ!」と、なってたと… |
白川 | それで、もう一つの理由は、債務整理をする一つの対応でもあるんだけども、盛んに弁護士が「もう自己破産した方がいいですよ」と勧めるんですね。それで、自己破産という言葉を多くの人が耳にするようになったんですね。 過払いと似ているかも分からないですね。そもそも、自己破産? 債権者破産? … 破産って、何だと思いますか? |
堀 | 破産って、全部、借金も含めて、自分の所有しているものも、すべてを失うというか…チャラにするイメージ。 |
増山 | 放棄する? |
白川 | よく、自己破産のメリット・デメリットはなんですかという事を、日常生活の中で大勢の人から質問されます。自己破産のメリットは、普通無いですよね … ただ、ひとつあるとしたならば、堀さんが言ったように、自己破産をすると借金を返さなくていいんじゃないかというのが、そのメリットですよね。 例えば、400万持ってる人が400万払わなくていいというのは、それはメリットというか、それによって助かるというのか。 ただ、僕は、メリットほどのものではないと思うんですね … 返さなくてはならないものを返さなくてすむ、というだけの話で。それは、昔も今も同じですよね。 それに対してデメリットは、昔に比べたらずいぶん少なくなりましたね。昔は、戸籍に破産者と書かれたり、戸籍そのものが赤くされるなんて話しも聞いたことありますから ─ 戸籍自身に書かれたりするわけですから。 だけど、現在も、破産した過去を持っている人は、それなりの大きなダメージではありますよね。だから、今日は法律的な言葉じゃなくて、大事なことは、「破産を考えている人の一番メリットは、なんですか? デメリットはなんですか?」という…。 借金を返さなくて済むという意味では、メリットがあります。ただし、それは破産とは直接関係なくて、同時に申し立てるのですけども。破産というのは、『全部財産出しますから、あとは、払えないから借金を免除して下さい』というのが、破産です。しかし、払えるのに何もないですと言うじゃないですか。現金なら、20万以上持ってないとか。高価な財産等がない場合は、結局、分配する財産が無いわけだから…。先ほど申し上げたように、破産というのは、平等に分ける手続きです。分けようにも分けようが無いから、破産をすると同時に『破産手続きは終了しました』ということで終わるのを、同時廃止と言います。破産手続きは開始したんだけども、開始すると同時に、本来は平等に配当するのが破産手続きです。配るものがないから。だから、それで破産手続きは終わりましたということで同時廃止というんだけども、破産であることに変わりないんですよ、どっちも。 だからといって、その人が本来持ってる債務を払わなくていいとなるわけじゃないんです。そうすると、免責の申し立てというのは、個人の場合 ─ 会社なんかは出来ないんですが、免責の申し立てをして、裁判官が別途審理して、『実際払えないですね。これからの債務は別ですよ? 破産の申し立てをした時の債務は、払わなくていいですよ』というのを、免責手続きといいます。 |
上柳 | それは、ちゃんと裁判所が判断する… |
白川 | 裁判官が判断します。それが出て初めて、残りの債務は払わなくていいということになるわけですね。 原則は、人の借金をチャラにしようというんだから、まず、あるものは出しなさいよということになりますよね。 ただ、家財道具と言いますけども、普通、債権者は普通の家財道具まで、売ればいくらかになると思いますよ。しかし、実際いま、家財道具なんて競売に出したって、いくらでもないですから。ただし、高価なものは別ですよ。堀さんなんかは、持ってるんじゃないかな? |
堀 | 持ってないですよー! |
白川 | もちろん、家とかは出さなくちゃいけないですよ。それから、車ですね。当然、車はローンで買ってる人が多いじゃないですか。そうすると、債権者にしてみたら、自分が売った車だから、価値があるなら、とりあえず返して下さいって話になりますよね。ただし、それはクレジットで売った人の物ですから、それは、一般の債権者は持っていきません。ただ、車も7〜8年経てば、価値はゼロに近いですから。そうすると、結局、さっき配当するものがないと言う方にはいっちゃうんですね。 ですから、基本的には前の借金は払わなくていい、と。ただし、今住んでる家賃なんかあれば、それは日々使っているわけだから、それまで免除されるわけではないです。 破産を申し立てた時に返せないから、もう破産をした時の債権については払う必要がないという話で。その申し立てた後に使った日々の電話料金だとか家賃だとか、その後買ったものなんかは、当然払わなくちゃいけない。 |
上柳 | 生活をコンパクトにして、考え直さなくちゃいけないんですね。 |
白川 | ただし、基本的に、破産は決して名誉なことでないことはわかりきってるし、やっぱり昔も今も『あの人は破産したんだ』というのは、それなりの目で見ますからね。 だから、デメリットは何ですかと言ったら、特に結婚する前の女性とか男性の場合は、『良く考えたらどうですか?』と、言います。 |
上柳 | お時間でございます。今日は、自己破産についてでした。どうも、ありがとうございました。 |
白川 | どうも、ありがとうございました。 |
増山 ・堀 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー / 堀ちえみ氏 = タレント曜日パートナー (文中敬称略) | 第37回 | TOP[t] | 第39回