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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年1月31日 火曜日 (第50回)
テーマ
「離婚後、主人の連帯保証人をやめることは出来ますか?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日のこの時間は、ラジオの前の皆さんに「法律の問題」についてお話を伺う、「ごごばん!法律クリニック」です。スタジオには、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年の白川勝彦弁護士です。宜しくお願い致します。 |
白川 | 宜しくどうぞ、お願い致します。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 白川さんが、幻冬舎の経営者新書というところから「金儲け弁護士の自己破産ビジネス」という本をお出しになるんですよね。読ませていただいたんですが、過払い金等々のことがよく分かるのと、白川さんご自身が … ご実家が、幼き頃に破産ということを体験し、差し押さえというのがあったりとか。そんなところから、今のお仕事に、実はつながっているというのを知りまして。改めて、この話、一日とって聞かせてください。 それでは早速、今日の相談内容です。今日は、匿名の女性、47歳の方の、このメールです。 |
増山 | いま、主人との離婚を考えています。現在の夫婦生活を考えると、主人も離婚には同意してくれると思いますが、気になっているのが、私が主人の連帯保証人になっていることです。主人は小さな会社を経営していて、始める時に、私が連帯保証人になっているんです。離婚するとなれば、この連帯保証人も取り消したいのですが、主人には資産もありません。法的に、保証人をやめることは可能でしょうか。 |
上柳 | 誰も、こういうことがあるかもしれないから、連帯保証人をどうしようかと、その時は考えないんでしょうね … ご夫婦でご商売やっていると。ちょっと、深刻なケースですが、どうしたらいいですかね。 |
白川 | 本当に、この保証という話は、色んなところにありますし、また、保証のために家屋敷を無くしてしまったという方も、いっぱいおります。 これまでも、この話は何度も出てきましたが、今日は改めてじっくり、保証というのはどういうことなのか、ご説明したいと思います。 例えば、500万円を借りました。借用書、作りますよね。利息はいくら払いますと。借りたご本人の名前と、その隣に保証人の名前を書いてありますね … 一枚の紙が多いんですけども。しかし、その一枚の契約書は、実は二つの契約があるんですね。500万円を借りた、Bさんとしましょうか。債権者はAとしまして、Aさんから、Bさんが500万円借りたと。そして、どういう風に返します、金利はいくらですと書いてありますね。それは、厳密に言いますと、金銭消費貸借契約というのが一つの契約にあるわけです。その隣に、Cさんという人が、連帯保証人として判子を押してある。ところが、それはAさんとCさんとの契約なんですね。これは、保証契約と言います。AさんとCさんとの保証契約なんです。 |
上柳 | BとCじゃなくて、借りているAとCさんとの保証契約…。 |
白川 | どういう契約かというと、Bさんが書いてある通りに返せなかったら、私が払いますよ、と。その債務は、保証債務といいます。借りた金を返すのだから、金銭消費貸借に基づく債務ですね。これは、Bさんが返さなかった場合、私が返しますという … 同じ債務なんですが、保証債務なんです。ですから、Bさんが契約書通りに返してる分には、Cさんは何の関係もないわけです。返さなかった場合に、この問題が出てくるわけです。 もちろん、まったく関係ないといっても、お金を借りるBさんとCさんとの間には、今回はご夫婦だとか、友人だとか、色んなケースがあります。だから、BさんとCさんが何の関係もなければ、こんな契約する必要ないんで。だから、無関係とはいえないんですが、基本的には、これは別の契約になる、と。だから、BさんとCさんとがどういう関係だったか、どういう内訳だったかということは関係なく、Bさんが払わなければ、Cさんは払わなくてはいけない。だから、BさんとCさんとの関係は、関係無いということなんですね。 |
上柳 | それだけ、連帯保証人というのは重いんですね。一つの契約が交わされちゃう、ということですね。 |
白川 | ですから、Bさんが500万借りたと。400万までは返したけど、結局返せないと。そうすると、自己破産したとか、あるいは、民事再生でまけてもらったということは、Bさんはありますね。 しかし、その場合、BさんのAさんに対する債務は減っても、Cさんの元の保証債務は、何にも影響ないわけです。だから、Bさんが自己破産したとしたら、BさんはAさんに返す必要が無いと裁判所から認めてもらえるんですが、Bさんは、それでいいですよと。ただし、Cさんは別の契約で約束したんだから、残が400万なら400万払いなさい、ということなんですね。 ですから、離婚するんでなんとか法的に抜けられるんでしょうかということですが、たとえ夫婦関係であろうとも、基本的には関係ない。離婚しようが、債権者であるAさんからみたら、関係ないことだから。ただし、保証債務といいましたので、保証債務そのものも、債務整理の対象になります。 |
上柳 | Cさんが、また別に、裁判所に相談する、と…。 |
白川 | 私は、とても400万なんて金は返せないから、0にして欲しいというなら、自己破産を申し立てればいいし、全部は払えないけど一部は払うというなら、民事再生を申し立てたりすれば、それは、Cさんが別に申し立てないといけないわけですね。 今日の話を要約すると、私はいつも、この問題についてこう答えるんです。色んな関係があるから、保証人になって欲しいと頼まれるわけですね。その時に、絶対に迷惑をかけないというのは、通り文句なんですけども、しかし、それは色々話した通り、保証契約というのは、関係ないですよ。Bさんが私になんと言おうが、絶対関係無いです。だから、どういう関係であるにしろ、保証人の判子を押す以上は、Bさんが払わなかったら私が払わなくてはいけない、と。そういうことになるんだ、と。それを逃れる道は、殆どないという風に考えて、判子を押してください。 ところが、なかなか断れないですよね。私ももちろん、政治家をやっていました、大勢の人を知っていますから。さすがに、私は貧乏政治家と評判でしたから、そういうことを頼む人はいなかったですが、それでも、中にはありましたけども。私は、こういう言い方をしていましたね。『私は、親の遺言で、保証はするなと言われているんで、勘弁して下さいよ』と。 しかし、それだけではすまない場合もありますよね。どうせ、その人が払わなかったら返さなくちゃいけないわけですから。困っているから頼むんだから、とても、貴方の頼み全額は力になれないけども、これだけなら余裕があるから、これを使って何とか、苦境を脱して下さいというようなことをいって、自分で出来る範囲の額を渡します。 |
上柳 | ご夫婦でも、ご主人がもし、奥さんの事を本当に愛していらっしゃるんだったら、夫婦での連帯保証というのは、なかなか難しいという話になりますね。 はい、是非この「金儲け弁護士の自己破産ビジネス」の本の内容について、来週あたり、伺わせて下さい。 白川勝彦弁護士でした。ありがとうございました。 |
白川 | どうも、ありがとうございました。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第49回 | TOP[t] | 第51回