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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年4月10日 火曜日 (第59回)
テーマ
「債務整理を考えておりますが、資格制限について詳しく教えてください」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日、「ごごばん! 法律クリニック」の時間がやってまいりました。ラジオの前の、あなたの法律の問題について伺います。スタジオにはお馴染み、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年の白川勝彦弁護士です。宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくどうぞ、お願い致します。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 今日も、ご相談内容をご紹介いたしましょう。ユキヒロさん、40歳の男性のメールです。 |
増山 | 私は、数年前から収入が減ったこともあり、消費者金融など、数社から借り入れをしています。返済が相当厳しい状態になっているので、債務整理を考えているのですが、少し調べたところ、資格制限というものがあることを知りました。私は警備員の仕事をしていて、警備員の資格を持っていますが、問題ないのでしょうか? そもそも、資格制限とはなんでしょうか? |
上柳 | 債務整理に、資格制限 … これ、初めて聞く話なんですが… |
白川 | 資格制限というんだけど、逆に、債務から逃れたいというのは真剣ですから。基本的には、『こういう資格があるから、債務整理が出来ません』なんてことは、ありません。ただ、ある債務整理をやると、『せっかく仕事をしている人の場合、制約が出来てきますよ』という問題を、資格制限と俗に言うんですね。 |
上柳 | 債務整理した後の問題なんですね。 |
白川 | ところで、増山さん。債務整理って、おおむね3つの方法があるといいますが、どんなやつでしたっけ? |
増山 | 自己破産か、任意整理か、民事再生。 |
白川 | 何度か話をして、3つの方法があるといっていますが。任意整理だとか民事再生の場合、こういう資格の制限というのは、一切ありません。ただ、自己破産をした場合は、そういう問題が起きるということですね。 ところで、自己破産というのはどういう場合にするんでしたっけ? |
上柳 | 『もう返せません』と… |
白川 | 借金の返済が困難である、という場合ですね。裁判所に認めてもらって、『あなたは、その借金を返さなくていいよ』と、いうことをやるわけですから。 一定の資格がある人の場合、どうしてもある程度制約が出てくるというのは、やむを得ない。だから、弁護士なんかは、まず資格制限にもろに引っ掛かります。あと、司法書士だとか弁理士だとか … 俗にサムライ法という、下に士という字が付くやつですね。いっぱいあるんですね … 土地家屋調査士ですとか、不動産鑑定士とか、公認会計士とか … 社会保険労務士なんてのもありますね。行政書士、中小企業診断士だとか、下に士が付く職業は、『資格制限に引っ掛かりますよ』と。自己破産する場合はね。 なぜかというとですね、弁護士なんかは、人の何千万というものの処理を扱うわけですから、それが自分の借金が返せなくてアップアップしてる人がやった場合、ちょっとどうかなということだから。 破産法で決められているわけじゃ、ないんです。それぞれの法律で、決められているわけですね、大本は。 ところが、意外に思われると思うんですが、お医者さんなんかは、全然、資格制限に引っ掛からない。 |
上柳 | そうなんですか! |
白川 | 調理師だとか美容師さんとか … 昔、トブライ法と言いましたね。同じシでも、下に士が付くのはサムライ。こっちはトブライ法と言って、主に師は技術なんですね。技術だから、大事な命を扱うけど、人のお金を扱うわけじゃないから。調理師さんも、フグなんか扱えば命に関係しますけども、基本的には技術なわけです。だから、その人が借金を持っていようが、料理の腕には関係ないわけです。お客さんに迷惑かけることは、ないですよね、普通の借金という問題では。 ところが、このご質問の方の、警備員。例えば、道路で交通整理やるなんてのも、これ、免許ですよね。ところが、警備法というのは、例えば、この前6億円取られたとか話がありましたよね。ああいう警備も、例えば、1億円のダイヤモンドの警備も、道路工事の案内をするのも、同じ免許なんですよ。 |
上柳 | そうなんですか!! |
白川 | 同じ警備員の免許なもんだから、だから、警備員なんかはダメだと言われているんですね。 それから、保険の外交員なんかやってる方も、ダメなんです。というのも、やっぱり今は、現実にお金を触ることはないんですが、昔は、預かったりして払い込んで初めて保険が成立するから。そうすると、債務の支払いが困難であるような人がそういう仕事に携わると、迷惑かけるんじゃないかというところから来るんで、合理性がそれなりにあるんですね。 それから、公務員。国家公務員であろうが、地方公務員であろうが、公務員だからといって、自己破産したからといって、職が制限されるわけじゃないんです。それは、やっぱり大事なんです。 ただ、せっかく持ってる大事な資格ですから、その方が破産したからといって、その資格を全部失わせるというもんじゃないんです。じゃあ、裁判所が入って、『これから、あなたの財産をどういう風にして整理するか、決めましょう』 ─ それを、破産開始決定といいます。 そして、最終的には『わかりました。返せないんだから、払わなくていい』ように決める ─ そういうのを、免責決定といいます。 だいたい、破産決定やってから、短い人の場合で2〜3ヶ月。それから、長い人の場合10ヶ月間くらいかかる人もいますけども ── その期間は、その資格に伴う仕事には携わってはいけないということであって… |
上柳 | そう、めちゃめちゃ長くもないんですね。 |
白川 | そういうことですね。だから、免責になったら、それが復権されると言ってますんで、その期間だけだ、ということなんで。 通常の人の場合、破産したからといって、そういう面では携わる仕事がなくなるということは、法律上はないんですけど。だけど、警備員というのは、人の大事なものを、そもそも扱うのが仕事ですから。警備会社は、『自己破産した人なんかは、ふさわしくない』という形で、採用しなかったり、あるいは、そういう大事な警備からは除くというようなことは、ありますね。 保険の外交なんかもそうです。だから、外交員じゃなくて、事務の方にまわすみたいなことです。 ですから、もう一回繰り返しますが、債務整理というのは、資格があったら出来ないなんてことはない、ということです。どんな人でも、出来ます。ただし、自己破産という特別な場合だけ、『特別な資格を持っている人の場合は、一時的に制約されることがありますよ』と、こういう風に考えていただければ、よろしいんじゃないでしょうか。 |
上柳 | 自己破産の場合、と。そして、一時的に制約があると。そういう職業もあります、と。これは、まったく知らない話でしたね。 |
白川 | 普通の方は、あまりないんですけどね。 |
上柳 | どうも、ありがとうございました。白川勝彦弁護士でした。また来週、宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくどうぞ、お願いします。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第58回 | TOP[t] | 第60回