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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年5月22日 火曜日 (第65回)
テーマ
「ギャンブルで作ってしまった借金は、債務整理出来るのでしょうか?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日この時間は、「ごごばん!法律クリニック」。ラジオの前の、あなたの法律の問題についてお話を伺います。スタジオには、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年の白川勝彦弁護士です。どうぞ、宜しくお願いします。 |
白川 | どうぞ宜しく、お願い致します。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | それでは、今日の相談内容をご紹介いたしましょう。匿名希望、34歳の男性の方からこのメールです。 |
増山 | 私は一時期ギャンブルにはまってしまい、消費者金融数社からお金を借りていました。総額で250万円くらいになってしまい、これではいけないと、通常の仕事以外に夜のアルバイトも始めたのですが、追いつきません。いま、債務整理を考えているのですが、以前、ギャンブルで作った借金では自己破産などの債務整理が難しいと聞いたことがあるのですが、ギャンブルで作ってしまった借金でも、弁護士さんに相談することはできるのでしょうか? |
上柳 | ギャンブルによる借金。ほどほどに楽しむ分には、楽しめていいんですが、深みにはまってしまいますと、厄介なことになりますが…。借金は借金、ですけどね。これは、いかがなんでしょうか。 |
白川 | 今は、ずいぶん反省されておられるようで ─ 普通の仕事のほかに、夜のアルバイトも頑張っておられる。こういう人、いっぱいいると思いますよ。債務整理を長くやっておりますけど、本当に日々の生活が苦しくて、もらう給料の中で間に合わない、と。そして、毎月毎月借金が確実に溜まっていくというケースよりも、僕がいつも言うとおり、人間というのは、ギャンブルに走ってしまう時もあるし、場合によったら飲み食いの方にはまってしまうこともあるし…。女性の場合は、買い物でストレスを解消するなど、そういうのもありますし…。 借金を作った中には、こういうものがあるんです。ギャンブルで作ったであろうがなんであろうが、借金は借金なんですね。給料が、リストラされて足らなくなって、生活費のために作った借金であろうが、ギャンブルで作った借金であろうが、どこかで派手に遊び過ぎて作った借金だろうが、借金は借金なんですね。 普通、借りに行く時に「これからパチンコに行くんですが、金貸してくれますか」とか「今日は、これから大いにどんちゃん騒ぎをするので、金貸してくれますか」なんて言いませんよね。また、業者も、自由主義社会ですから、中には額が大きかったりすれば聞くとこもありますけども、通常は、そんなこと聞かないで、ちゃんと払ってくれそうだと思うなら、業者も貸してくれますよね。 ですから、借金は借金なんであって、色んな方法があるんですが…。ところで、『債務整理が難しいと聞いたことがありますが』と、質問にありますけど、そもそも、債務整理とは、どんなのがありましたかね? |
上柳 | いつも白川勝彦弁護士でお配りになってる、「豆知識 債務整理の三つの方法」というカードを頂くんですけども。増山さんが、上から紹介しましょう。 |
増山 | 任意整理・個人再生・そして自己破産。 |
白川 | この中のうち、任意整理・民事再生では、借金は借金で、何に使ったとか基本的には問題になりません。 今ある借金を返すのが大変だとか、なんとか負担を少なくしたいということで、とくに何に使ったということは問題にならないんですが、自己破産の場合だけ、問題になるんですね。自己破産も、債務整理の方法ですから。ところで、自己破産というのはどんなことでしたかね。 |
増山 | もう借金の返済が出来なくなっちゃって、返せません、勘弁して下さい。 |
白川 | …ということですよね。 |
上柳 | 裁判所が「わかりました、しょうがない」と認めてくれて…。 |
白川 | 言われた方は、借金が返ってくると思ったら、返ってこないんでしょ。一方の方は、チャラにしてあげるわけですよね。貸した方が戻ってこないという…。 ですから、自己破産というのは、法律上払わなくていいですよという、一つの公権力の行使なわけですよね。だから、チャラにされる方のことも考えてあげなくてはいけないわけです。本人はギャンブルで楽しんだかもしれないけど、ある面では、使うだけ使っていっぱいになって返せないから、裁判所頼みますよといったら、ゼロにされた方が困っちゃいますよね。 …と、いうことで、自己破産の手続きは、我々、裁判所とその辺の議論をするんですが…『どうして、これだけ借金を作ったのか』と。そして、『どうして、返せないから破産にしてほしいのか』という、かなり緊迫したやりとりをするんですよ。 ですから、裁判所といえども捜査機関でないですから、本当に何に使ったかと、調べられないんですが。ベテランの裁判官がいれば、なんで急にここで300万作っちゃったかとか、この一時期に250万作っちゃったのと言ったら、何に使ったのといいますよね。こっちだって、公権力を使って債務をゼロにしてもらうんですから、いい加減なことは言えないんですよね。裁判官もベテランですから、あまりにもおかしければ『これ、何に使ったんですか?』と、言いますよ。その時、ギャンブルだけじゃなくて、派手に飲み食いして遊興費で使ったというようなことを含めて、そういうものは、自己破産の免責と言います。払わなくてもいいという対象になりませんよという、法律の条文があるわけです。 ですから、自己破産という債務整理の方法をとる場合は、ギャンブルで作ってしまったというのは、理由になりません。だけど、借金は借金で現実には苦労しているわけですから、ある面では、任意整理でとてもできないような場合だったら、民事再生・個人再生でやれば、問題にならないわけですから。5分の1くらいにはできるでしょうね。そういうことで、色んなことで法律は法律ですが、ギャンブルで作った借金だったとしても、それがもとで苦しい人はいっぱいいるわけですから。それはまた、ベテランの弁護士には知恵がありますから、なんでも率直に言って、相談してみることが一番大事なんじゃないでしょうか。 そうは言っても、法律上は、『ギャンブルであるとか遊興費に使ったものは、免責の対象になりません』ということがあることだけは頭に入れて、困っていることが事実なら、それは弁護士に相談していただければ…。そこで、弁護士としては弁護士の知恵を色々出しますから。 冒頭で言った通り、なかなか普通の暮らしをしていても、何百万の借金が出ることはないんですよ。人間というのは、色んなことで道を迷う時がありますので。僕自身も、過ちの多い人間ですから。色んな道があるんだということだけで、弁護士さんを信頼して、相談して欲しいなと思います。 |
上柳 | 切実な問題を抱えている方。ぜひ、そのような行動をとっていただきたいと思います。お時間になりました。白川勝彦弁護士でした。どうもありがとうございました。 |
白川 | どうも、失礼しました。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第64回 | TOP[t] | 第66回