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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年9月4日 火曜日 (第80回)
テーマ
「交通事故の際、健康保険証は、使用できないのでしょうか?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日この時間は、「ごごばん!法律クリニック」。ラジオの前の、あなたの法律の問題についてお話を伺ってまいります。スタジオには、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年、白川勝彦弁護士です。宜しくお願い致します。 |
白川 | 宜しくどうぞ、お願い致します。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 今日も早速、ご相談内容です。匿名希望、49歳の男性の方からの、このメールです。 |
増山 | 健康保険証について、聞きたいことがあります。 |
上柳 | 病院で治療を受けたら健康保険証を出す。ごくごく当たり前のことなんですが、交通事故の場合は適用されないんですか? |
白川 | そうですね。昔は結構こういうことがありまして、大きな問題になりました。今でも、こういうことがあるんですかね。 結論から言いますと、まず使えます。 なぜ、こういう問題が起きるかということを、今日は詳しく話をします。あくまでも、病気や事故に遭った ─ 要するに、医療を受けた、と。そしたら、健康保険証は使えて、3割は負担で、残り7割は健康保険に入っているどこかが払いますというのが、健康保険という保険のしくみです。ただし、その場合の大前提が違ってくるんです。保険を使う場合は、受診料はいくらとか、点数がきちんと決められているんです … 保険診療の場合は。ところが、医療の場合には、保険診療と自由診療というのがあります。ですから、自由診療をいくら医療行為から頂きますよというのは、病院と依頼者とが、『これは保険診療じゃないですよ』と。 例えば、美容整形だとか、『これは医療行為だけども、これは保険に基づく医療行為じゃないですよ』と。『だから、高いですよ』ということなんです、端的に言うと。 だから、交通事故の場合も、どっちもありうるわけです。病院にしてみれば、『どうせあなたが払うわけじゃないから、自由診療ということにしてくれませんか』と。だから、昔は、交通事故の治療行為は、病院なんかは、高いお金を保険会社に請求したりしていたことがあったんですね。 それから、事実、例えば外傷を負ったとして、形成美容など、怪我をできるだけきれいに治したいとかというと、自由診療の方がいい場合もあるかもしれませんよね。だから、病院の方からしたら同じ治療でも、複雑な事件とか難しい治療が必要の場合に、自由診療にしておいて貰った方が色んな手が使えますから。できれば自由診療にしてもらいたいわけですよね。少々の額ならば、それでもかまわないんですが、被害が大きくなると、最終的には加害者に払ってもらうことは出来ますけど、その間、立て替えなくちゃいけないですよね。病院としたら、医療をしたら、その報酬を貰わなくてはいけませんから。だから、最終的に、被害者は事故を起こした人に対して請求できますから、最終的には、ご本人が負担する必要がないんですが…。 そういう問題がありますから、『できれば、保険診療で』ということを言っておけばいいと思います。 ただし、その場合でも、たとえ保険証を使ったとしても、保険の7割を負担する健康保険組合は、本来負担する必要がないわけですよ。だって、交通事故ですから、加害者がいるんです。それは、通常は本人も請求するかもしれませんが、健康保険で代わりに払ったところが、事故を起こした人に対して、『本来、私たちが払うものじゃない。加害者のあなたが払うものですから、私たちに払って下さいね』ということは、健康保険組合が、慣れてますからやります。 それから、ちょっと専門的になりますが、例えば、交通事故なんかでも、医療費が、部位によっては、かなり金額がかかる時があります。例えば、400万かかったとしましょうか。骨折だとか、複雑骨折の後の形成などのためにかかったという場合 ─ その場合に、被害者の方にも過失があると、過失相殺といって、例えば、400万のうち3割、被害者の方にも過失があったという場合、『3割は、あなたの方の負担です。それはあなたが払って下さい。残りは、私たち加害者が払います』と、いうことになりますから。 病院の人には大変かもわかりませんが、医療行為をして払わないというわけじゃないんだから、できれば、保険診療ということでやってもらうということが、一番じゃないでしょうか。 |
上柳 | それは、窓口である程度交渉というか、お願はできるんですね? |
白川 | はっきりと、『保険診療でしてもらいたいんですが』と。 |
上柳 | 遠慮することはないんですね。 |
白川 | 遠慮することはありません。 |
上柳 | これは、『自由診療でやって頂いた方が、私どもは助かるんですけど、こちらが負担することもあるかもしれないので、なんとか保険の適用をお願いします』と願えば、ちゃんと叶えて頂けるんですかね。 |
白川 | きちんと、そういうことを申し上げれば、そうはいきませんなんて言う病院は、殆どないはずです。 |
上柳 | 知らなきゃ分からないで、言われるがままということになってしまいますよね。 |
白川 | そういうことなので、病院にかかったわけですから、『出来れば、健康保険証でまずやってもらいたいんですが』と。そうしたら、まず3割だけは自分が払えばいいわけですから。残りは、保険会社が加害者の方に、ちゃんと請求しますし。自分の負担したものについては、普通ならば加害者の方から、別途保証金という形で払ってもらえますから。 交通事故に遭いながら、またなおかつお金のことで苦労をするなんて、馬鹿らしいですからね。 |
上柳 | こういう時に、やっぱり専門家の方の知識、経験というのが必要ですね。 今日は、交通事故の時に、健康保険は適用できるのか ── かなり大事なお話でした。白川勝彦弁護士でした。どうも、ありがとうございました。 |
白川 | どうも、失礼しました。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第79回 | TOP[t] | 第81回