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FORUM21 2007年6月1日 通巻127号
閻魔帳
本性顕現が問われる
白川 勝彦 (元衆議院議員)
2007年5月14日憲法改正に関する国民投票法が成立した。現在の自公合体政権の議席を考えれば、野党がこれを阻止することはきわめて困難であったであろう。今回成立した国民投票法には、最低投票率・公務員や教員などの関与・報道規制・投票年齢など多くの問題が指摘され、これを理由に反対という声も多い。しかし、憲法改正案が国民投票にかけられるのは、衆議院と参議院のそれぞれで3分の2の賛成を得て憲法改正案が決められてはじめて行われるのだ。本当に大切なことは、おかしな憲法改正案の発議をどうして阻止するかということではないだろうか。
自民党の新憲法草案をみれば、明らかに危険な憲法改正であることは明らかである。もしそのような憲法改正案が衆参の3分の2の賛成を得て発議されることがあるとすれば、それが問題なのである。今回国民投票法に反対した勢力が阻止しなければならないのは、そのことである筈だ。そのような憲法改正案が発議されるような状況では、仮に今回いかに理想的な国民投票法を作ったとしても、その国民投票法そのものが改悪されるであろう。私たちが問題にしなければならないのは、おかしな憲法改正案が衆参で3分の2の賛成を得て発議されるのを阻止することである。
それはそんなに難しいことであろうか。このような不安を多くの人が抱くのは、民主党の憲法改正に対する態度がいまひとつハッキリしないからではないだろうか。民主党でも憲法改正は必要だと考える国会議員がかなり多くいるというアンケートがある。そうすると憲法改正案が衆参で3分の2の多数を得ることは十分に考えられる。
しかし、いま問題なのは、憲法改正の一般的な是非ではない。憲法に改正手続がある以上、現在の憲法をさらに良い憲法にするために改正することそれ自体を否定する者はいないであろう。そんなことが問わているのではないのだ。問われているのは、自公合体政権が行おうとしている憲法改正案に対して賛成なのか反対なのかということなのである。自公合体政権が行おうとしている憲法改正に賛成の民主党議員がいるのであれば、そのことが問題なのである。民主党はそのことを早晩ハッキリとせざるを得なくなるだろう。またしなければならない。そのような民主党の国会議員を許容しているようでは、民主党はいったいどういう政党なのだという疑問を多くの国民が抱くようになるのは当然である。
安倍首相と自民党は、憲法改正の是非を今度の参議院選挙から国民に問うという。彼らが問おうとしているのは、一般的な憲法改正の是非ではないのだ。自民党新憲法草案に示されているような憲法改正なのである。民主党の候補者でそれに賛成なのであれば、そのことをハッキリといわなければならない。民主党を支持する多くの人は、きっとノーというであろう。公明党は「加憲」などと訳の分らないことをいっているが、結局は自民党の新憲法草案に賛成するのであろう。すべての政党や政治家が最後は憲法に対する態度を明らかにしなければならなくなる。そういうことを曖昧にできなくなったのが、国民投票法が成立した政治的意味である。