カジノ解禁法案と日ロ首脳会談
16年12月17日
No.1884
暮れということもあり、私は今週、非常に忙しかった。そのうえ、国会の会期末で、カジノ解禁法案の行方を確かめたかったので、ニュースを細かくフォローしなければならなかった。カジノ解禁法案は、12月15日未明に衆議院本会議で回付された修正案が可決され、カジノ解禁法案は法律となった。終盤国会の攻防は一見無駄のように見えるが、国会の議席数を考えれば仕方のないことなのだ。野党は最大限の抵抗をした、と私は評価している。衆議院・参議院の選挙で国民がシッカリした議席を国会の中で持っていないと、最後はこうなるのだ。
翌15日から始まった日ロ首脳会談のフォローも、結構大変だった。プーチン大統領が離日するまで、仕事をしながら、できるだけニュースをフォローしたつもりだが、なかなか、全貌は掴めなかった。政治家なのだから、事実さえ掴めばこういうことは得意なのだが、それがなかなか難しいところにヒントがありそうだ。結論からいえば、あまり実体がないから、空疎な言葉ばかりが多いのだろう。これが、私の現在の見方である。
昨日、安倍首相は、午後9時からのNHKニュース、午後10時からのテレビ朝日のニュース、午後11時半からのTBSのニュースと、立て続けに出演した。14~15日の夜遅くまでの日程を考えると、かなりタフな日程であった。3番組で安倍首相の言葉を細かく聴いても、日ロ首脳会談で何が決まったのか、殆んど理解できなかった。実体がないから、端的に言えないのだ。そう考えるのが、普通である。本来ならば、例の“得意の記者会見”で、堂々と説明するのが本筋であろう。
「元島民の自由往来」くらいは、もっと具体的に詰められた筈だ。北方4島での「共同経済活動」の実施のための“特別の制度”について、交渉を開始することで合意したという。その程度のことのために、これほど大騒ぎする必要があったのだろうか。安倍首相による、安倍首相のための日ロ首脳会談だったのではないか。そんなことに大騒ぎしたマスコミも、マスコミである。
領土問題を含む平和条約締結というテーマは、政治的に、最も重大かつ深刻な問題である。国家と国家の、威信と総力を結集して取り運ばなければならない問題なのだ。そんな交渉を、安倍首相の選挙区で行うこと自体が、私には考えられないことである。最近わが国では、首脳同士の“個人的な信頼関係”が大切だと言われている。しかし、これも問題だ。国家対国家の利害の対立は、国の総力を挙げての交渉で解決されなければならない。それが、外交の基本である。個人的信頼関係など、その潤滑油に過ぎないのだ。
前号の永田町徒然草で私は、「この15日から、日ロ首脳会談が始まる。この首脳会談も、“カネ、カネ、おカネ”だけの会談となるだろう」と書いた。私の指摘は、まんざら的外れではなかったようである。首相官邸で行われた両首脳の記者会見に先立って行われた各種文書の交換、経団連会館で行われた日本とロシアのビジネス対話は、それを文字通り象徴するものであった。
今回の日ロ交渉に難癖ばかり付けているようだが、誤解しないで貰いたい。「日本とソ連(ロシア)の友好関係を大切にすべきだ」というのは、私が国会議員になった時からの持論であった。当時は冷戦の真っ只中で、ロシアが社会主義体制の時代であった。「江戸時代でも、260年しか続かなかった。ソヴィエトという体制が100年、200年続くとは限らない。ソ連の体制が日本と異なったとしても、わが国の隣国であるという現実は、未来永劫に変わらない」─ こう主張するのは、同時としては、かなり勇気の要ることだったのだ。
私にもし時間があったら、いちばん訪ねてみたい国は、ロシアである。私は、ソ連時代に3回、ソ連崩壊後に3回行った。いずれも、公務であった。だから、次は仕事ではなく、ロシアという国をじっくりと旅したいのだ。明治の初め頃、わが国は非常に親ロ的であったようだ。日露戦争とロシア革命が、その風潮を変えたのだろう。ロシアが私の考える自由主義国になったのかといえば、、私は否定的である。そうだとしても、ロシアとの友好親善 → 平和条約締結は、しなければならないと思っている。
まもなく、新しい年を迎える。昔は大晦日まで、年末は“必死”であった。ところが、最近では“必死の年末”という雰囲気がなくなった。12月23日の天皇誕生日、クリスマスイヴ、クリスマスと、何だか休みみたいな雰囲気のだ。しかし、中小零細企業である白川勝彦法律事務所は、そうはいかない。12月30日まで、必死に仕事をする。そうしないと、ボーナスも払えない。そういう企業や国民が、多いのではないだろうか。
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。