私の闘いの現場
09年11月28日
No.1355
今週も今日で終わりだ。白川勝彦法律事務所の仕事のひとつ、債務整理は毎月月末が忙しくなる。月末を債務返済日にしている人が多い。「いままでは何とか払えてきたのだが、今月の返済はできなくなった」ということで駆け込んでくるのである。理由が何であれ、“思い立った日が吉日”と私は考えている。
大手の消費者ローンは、すでに法定金利内の年18%にしているところが多い。ほんの1~2年前までは、ほとんどの会社が年28%の金利であった。そのころから借りている人は月々の支払額はかなり少なくなっているのだが、借りている金額が増えていれば月々の支払額は当然の事ながら多くなる。そうでないとしても、そもそも18%という金利は高いのである。年収近くの借金額になると、2~3ヶ月分の給料(手取り)が利息の支払いで消えていくのだ。
私は“多重債務者”という表現を好まない。当事者も多重債務者などといわれることを好まない。多重債務者という言葉は、苦しくてもうどうにもならないというイメージがある。しかし、多くの借金を抱えている人でもこれまでは何とかやってきたのだ。これからも何とかして返していきたいと思っているのだ。自己破産をすれば借金は確かに無くなる。債務整理というと自己破産というイメージがあるが、そんなことをしなくても債務整理をする途(みち)はそれなりにあるのだ。
いろいろの途を検討してみてもどうにもならないとき、私ははじめて自己破産の選択を勧める。自己破産したからといって昔ほどの不利益はないが、しかし名誉な事でないことだけは確かだ。自己破産を安易に勧める人が多いが、私はそう思っていない。何よりも依頼者や相談者の多くは、できれば破産はしたくないと望んでいるのだ。自分で借りたのだから、返せるものならば返したいと思っているのだ。まずその途を一緒に考えてあげることが大切だと私は考えている。
債務整理するためには、それなりの所要資金がいる。債務の全額を免除してもらう自己破産だって数十万円という弁護費用はかかるのである。多額の借金があるからといってどうしても自己破産しなければならないというものではない。貸した方が返済の催促をするのは当然だが、払うお金がなければ仕方ないではないか。昔のように強引な催促をすれば法的に問題となる。債権者としても打つ手はなかなか無いのである。無い者は強いのだ。
債務整理を考えている人が月々どのくらいの金額を債務整理のために割けるかということが最大の問題となる。それが多くあれば債務整理は簡単なのであるが、給料が下がり債務整理に回せる金額が少なくなれば、どの途を選ぶにしても長期となってしまう。いま多くの人々の給料が下がっている。信じられないくらい労働環境が悪くなっている。政治の現場にいる人はその現状を知っているのかと言いたい。しかし、政治が悪いといくら憤(いきど)っても、いま目の前にいる人が抱えている問題解決の助けにはならないのだ。
いつも言っているように“具体的状況の具体的分析”は政治の要諦だが、毎日携わっている債務整理の現場においても求められることなのだ。そして私は現実的に可能な解決策を提示していかなければならないのである。ひとたび受任すれば、依頼者と一緒にそれを実行していかなければならないのである。私は日々の仕事を通じて、日本の貧困と付き合わざるを得ないのである。
数日前から円が急騰している。また円高不況が懸念される。デフレ不況だろうが、円高不況だろうが、“不況”は国民にとって辛いことなのである。政治の責任を痛感する日々である。
それでは、また。