礼を尽くす
11年12月21日
No.1527
北朝鮮の最高指導者、金正日国防委員長・総書記(以下、金正日総書記という)が逝去した。この1日半、ニュース報道はこの話題でもちきりだ。しかし、野田首相や谷垣自民党総裁をはじめとする政治家たちがどのように発言したのか、まったく報道されていない。いかなる発言もしてないというならば別だが、もし発言しているとしたら、これを報道することは、非常に大切なことである。こういう時にいかなる発言をするかで、その政党や政治家の性格や資質が窺えるからである。そこで、各党のWebサイトを見てみた(検索時刻 : 2011年12月21日午前1時前後)。
民主党Webサイト
特に記載なし。
自民党Webサイト
金正日総書記の死去を受けて、谷垣総裁がコメントを発表(2011年12月19日)
「突然の逝去で、驚きを禁じ得ない」
最高権力者が亡くなれば、民主主義国家においても混乱が起こり得ることである。独裁体制のもとでは、なおさら何が起こるかの予測が極めて難しく、北朝鮮が大混乱に陥る可能性もある。それが周辺諸国に多大な影響を与えることもあり得る。
政府は、まずは緊張感をもって十分に情報を集めながら対応しなければならない。その上で、米国や韓国との情報の共有や緊密な連携を図るべきである。
何より北朝鮮には、拉致された邦人がいる。また、朝鮮半島には、南北合わせると多くのわが国同胞が在留している。政府は、こうした方々に関する情報を集めつつ、迅速かつ十分な安全確保を図らなければならない。
しかしながら、これまでの民主党政権における外交を見る限り、大いなる不安の念を抱かざるを得ない。野田首相の下で万全の措置を講じることを強く求めるととともに、わが党としても必要な対応をとってまいりたい。
なお、新しい体制においては、国際社会の枠組みの中で、拉致問題をはじめ核開発やミサイルの問題等について誠実に対応されることを強く求める。」
公明党Webサイト
公明党の山口那津男代表は19日午後、国会内で行われた記者会見で、北朝鮮の金正日総書記が死去したとの報道について、大要次のような見解を示した。
「一、突然の報道であり、驚きを禁じ得ない。国家的指導者の立場であった人の逝去に謹んでご冥福をお祈り申し上げたい。
一、これに伴い北朝鮮の権力の継承がどうなるのか、また、国際社会が求める非核化や6カ国協議の再開、南北対話の進展、さらに日本にとっては拉致問題の解決に向け、今後の北朝鮮の動きを注視していきたい。
一、日本政府には、地域の安定を確保するため、情報の収集と共有など日米韓の緊密な連携の下、中国やロシアなど関係国と協力しながら、万全の備えと対応を促したい。
一、(拉致問題への影響について)今後の状況が定かでないが、6カ国協議などの場で、対話による解決が図られる体制が早く整うことを希望したい。
一、(国交正常化交渉への影響について)このような目標が進展する環境を確保するとともに、その障害となるような課題を一つ一つ着実に解決していくことが重要だ。
一、(首相官邸の情報収集能力について)首相が街頭演説に出掛けた途中で戻ってきたというのは、それまで情報をつかんでいなかったか、事態が何か変化することに対する備えがあったのかどうかという点で、疑問なしとはしない。政府としての情報収集能力と対応の素早さに万全を期すよう求めたい。」
国民に哀悼の意 山口代表が弔電
公明党の山口那津男代表は19日、北朝鮮の金正日・朝鮮労働党総書記の死去に対し、金正恩・国家葬儀委員会委員長に宛て、次のような弔電を送った。
「金正日閣下の突然のご逝去の報に接し、日本国公明党を代表し、金正恩閣下をはじめ朝鮮民主主義人民共和国の全国民の皆さまに対し、謹んで哀悼の意を表しますとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
公明党は、両国関係の改善と発展を目指し、微力を尽くす所存であります。」
共産党Webサイト
日本共産党の志位和夫幹部会委員長は19日、マスメディアの求めに応じて次の談話を発表しました。
「北朝鮮の金正日総書記の突然の訃報に接し、驚いている。
一国の首脳の死として哀悼の意を表する。
後継の指導部が、2002年の日朝平壌宣言にもとづいて、核兵器、ミサイル、拉致、過去の清算など、両国間の諸懸案の包括的解決に真剣にとりくむとともに、2005年の6カ国協議で確認された諸原則にたちかえり、国際社会の責任ある一員としての道をすすむことを願うものである。」
みんなの党Webサイト
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)情勢について 《みんなの党代表 渡辺喜美》2011年12月19日 17:30
「金正日総書記死去は来年に予想される世界の指導者交代の予兆である。
体制の崩壊に進んで行く可能性も高く、日本政府は軍の暴発、難民流出の事態に万全の体制をとらなければならない。
北朝鮮内部の情報収集、日米韓の協力関係、拉致問題の解決に向けて政府は危機管理体制を強化すべき。
同時に国民に対し的確な情報を提供を行う必要がある。」
最後に首相官邸ホームページ
北朝鮮 金正日国防委員会委員長の死亡報道に係る内閣総理大臣指示 23.12.19 12:10
- 北朝鮮の今後の動向について情報収集態勢を強化すること。
- 米国、韓国、中国等関係国と緊密に情報共有すること。
- 不測の事態に備え、万全の体制をとること。
読者諸氏の検索の手間を省略するするために、長々と引用した。この際は金正日総書記の死に対して、政治家や政党がどのような意思を表明しているかが、重要な点である。そのような視点から見ると、公明党と共産党以外は、いかなる意思も表明していない。果たして、それでいいのだろうか。北朝鮮は、厳然と存在している国家であり、しかも、わが国の隣国なのだ。好き嫌いはあるだろうが、嫌でも付き合っていかなければならない国家なのだ。
金正日総書記は、北朝鮮の最高権力者だったのである。その人の死を悼むことは、その国と、その国民に対するひとつの礼なのであろう。日本人は、そのような礼を重んじてきた。たぶん、北朝鮮でも同じような礼があると思う。そうならば、政治的な立場や思惑を抜きにして、まず弔意を表明することが大切なだと、私は思う。北朝鮮とわが国には、解決しなければならない懸案が多くあるが、それらを解決するためにも、礼を尽くしておくことは有益でもある。
今日はこ、のくらいにしておこう。それでは、また。