『金儲け弁護士の自己破産ビジネス』を上梓
12年01月29日
No.1534
この永田町徒然草で、いま私が仕事としている債務整理のことを断片的に触れてはいるが、詳しいことは、ほとんど書いた記憶がない。日々の仕事でいろいろなことに遭遇し、不条理に思うことは山ほどあった。それを処理するのは私の仕事=任務であるが、そのことについて社会に訴えるのは、私の務めではない。また、依頼者や相談者の秘密に関することでもあるので、永田町徒然草や“法の庭”徒然草で書くのは、控えてきた。
平成24年1月27日に幻冬舎から発売された『金儲け弁護士の自己破産ビジネス』は、足かけ5年にわたる債務整理という仕事に関する私なりの総括であり、荒廃している債務整理の業界についての告発書である。債務整理という仕事は派手な広告宣伝で問題になっているが、内実は、地味で根気を要する仕事である。借金を作るのは簡単だが、その借金と向き合い解決していくことは、派手な広告が喧伝するほど容易ではない。
2兆円を超えるともいわれた巨大マーケット、過払い金バブルは、既にが崩壊した。死活問題に陥った金儲け弁護士が、いま、自己破産に新たな金脈を見出している。そのような弁護士は、ちょっと借金の額が多いと直ぐに「自己破産しかないですね」という。自己破産は、借金をチャラにするには確かに良い方法だが、債務者の生き方や人格を崩壊させる危険性がある。相談者が「できれば自己破産はしたくない」といっているのに、強引に自己破産を勧める弁護士も多いのだ。
自己破産は、債務者が裁判所に申し立て行うものである。申し立ての際に必要な印紙代などはわずかなものだが、普通は、弁護士に依頼しないとできない。それには、それなりの弁護士費用が必要である。ところが、その弁護士費用を立て替える制度ある。そこには、税金が投入されている。真に已むを得ない理由で自己破産せざるを得ないケースもあるが、かなり問題のある生活の結果として多額の借金を作ってしまい、自己破産ということも多い。
多くの社会派弁護士は、後者のようなケースでも可哀そうなのだから、税金を使ってでも救済すべきと主張する。それも、ひとつの社会保障といいたいのだろう。自己破産を申し立てる弁護士には、弁護士費用が確実に入ってくるのだから、自己破産事件を引き受ける。真面目に働いて、苦しい中でも税金を払っている人が、このことを知ったらどう思うのだろうか。国が行う社会保障には、こういうモノが実に多いのだ。
不況で、弁護士業界も不景気である。また、弁護士が急増したため、弁護士の仕事が少なくなっている。自己破産事件の処理は、書類を作成して裁判所に提出すれば、ほとんど認められる。考えようによっては、弁護士にとって割の良い仕事なのだ。ちょっと借金の額が多いと、直ぐに「自己破産しかないですね」という弁護士の本音は、意外にここにあるのではないかと思わざるを得ないことが多い。
この外にも、債務整理とその業界に関して、いいたいことは山ほどある。本書では、それらについて、徒然ではないく“真面目”に論じたつもりだ。私がいま直接に社会と接しているのは、債務整理という仕事を通じてである。その現場には、現在の社会が抱えている問題のほとんどが露呈している。これまでの私の著作と違い、今回は143頁なので、2~3時間もあれば読めると思う。ご購読・ご高評をいただければ、これに勝る幸いはない。
それでは、また。