人間と文化に対する洞察
14年07月20日
No.1685
7月の三連休、それぞれにお楽しみのことと拝察する。私はどこにも出かけず、ちょっと体を休めることにする。今回の三連休は、“海の日”を祝日にしたことに起因する。今度はまた、“山の日”を設けるという。「海だ、山だ」とはしゃいでいる子供のようだ。こんど、カジノ設置を主な内容とする複合型リゾート法案を自民・日本維新の会・生活の3党が提出し、この秋にも成立させるという。私には、とうてい理解できないことである。しかし、これがわが国の政治の現実なのである。
安倍首相は、鹿児島県の川内原発を再稼働すべく動き出した。国民の多くは、素朴に原発再稼働に反対の意を示しているが、自公“合体”政権はこれを無視して原発を再稼働させる気である。福島第一原発事故の検証も総括も、補償も済んでいないのに、とにかく原発再稼働だというのは、前号の「石油の一滴、血の一滴」で述べたように、経済的利益を優先する自公“合体”政権の本性を露呈している。その自公“合体”政権に圧倒的多数を与えたのは、わが国民である。国民の本性がそうなってしまったのなら、とても悲しいことである。
ウクライナ東部でマレーシア航空機が撃墜され、約300名の乗客乗員が全員死亡した。三月の航空機事故に次いで、今年で2回目である。マレーシア航空のみならず、マレーシアという国そのものの信用失墜は、免れまい。マレーシアの経済発展は目覚ましいものがあったが、基本的に大事なものが欠如していたのではないかという気がする。
安倍首相は、「集団的自衛権だ。地球儀俯瞰外交だ。成長戦略だ」と盛り上がっているように見えるが、その実は、焦りではないのか。マスコミや御用学者は、わが国の経済状況を順調だと言っているが、私にはそう思えないのだ。私が国会にいた時、わが国の経済的パフォーマンスは非常に良かったが、政府はそんなに煽らなかったし、そんなに派手な動きもなかった。国民や経済界は、己の営みに自信をもっていたと思う。だが、そのような自信は、いまや少しも感じられないのだ。
安倍首相が高い支持率を得ているのも、景気・経済に対する期待だと私は思っている。しかし、景気や経済の実態は、決してそんなに良くはない。安倍首相が打ち上げる諸“政策”が、そんなに景気や経済を良くはしないと国民が気が付いたら、安倍首相の支持率は一挙に下落するであろう。だから、コマネズミのように必死に動いているのだ。経済を立て直し、国民生活を向上させていくのは、自由主義経済の下では本当に難しい。基本をチャンと行っていくしかないのだ。
経済とは何か。国民の健康で文化的な生活を支える社会的な営為だ、と私は思っている。人間と文化に対する深い洞察がなければ、経済の発展はない。この「人間と文化に対する深い洞察」が、わが国では粗末にされているのだ。戦後の荒廃から立ち上がる時、わが国民はもっと「人間と文化に対して興味や洞察」を大事にしてきた。俗な言葉でいえば、日本人はもっと人間好きだったのだ。安倍首相の誕生以来、おカネが好きな人間が多くなってきた感がする。
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。