“張子の虎”も虎である。
07年11月17日
No.616
定例の世論調査や大連立騒動による世論の変化をみるための世論調査の結果が発表されている。その調査結果は、各社によってバラバラのようである。質問の仕方や実施時間帯によって調査結果が異なることはやむを得ない。しかし、そういうことはあまり気にする必要はない。私が何度もいっているように大連立騒動に関する潮目は変わった。それはなぜか……。
報道各社の世論調査の結果に共通していることがひとつだけある。それは圧倒的多数の国民が大連立に反対と答えていることである。大連立に反対という意見は、賛成もしくは評価するという意見の倍以上あることが窺われる。このことは何を意味しているのだろうか。そのことを正しく捉えないと、大連立騒動やねじれ国会に対する評価を誤ることになる。現にそうした論評が多くなされている。その中には、大連立構想に一時的とはいえ乗りかかった小沢民主党代表を意図的に攻撃しようというものもある。こういうものは、その意図を見抜かなければならない。
大連立騒動がこれだけ報じられたにもかかわらず、福田首相が提案した大連立構想の中身が一向に明らかになっていない。小沢民主党代表はその一部を記者会見で述べたが、福田首相ははぐらかして一切語っていない。福田首相が提案した大連立構想の中身も、福田首相と小沢民主党代表との間で合意された連立構想の中身が明らかになっていないのに、政治を専門としている者が無責任に非難や批判をするのはちょっとおかしいのではないかと私は思っている。
多くの国民は政治を専門としている者ではない。その多くの国民が大連立構想に反対していることは、現在の政治状況を自然に受けとめ大連立してまで解消する必要はないと考えていることを意味する。現在の状況とは、いわゆる“ねじれ”国会のことであり、当面の新テロ特措法案が膠着状態になっていることである。自公“合体”政権は、新テロ特措法案が成立しなければ“国益が損なわれる”と盛んにいうが、多くの国民はそのように考えていないのである。
“国益が損なわれる”問題とは、国民の65~75%がそのように感じる場合にはじめてこう表現してよい問題なのである。国益ということを安易にもち出す政治家はあまり信用しない方がいい。それは、公共の利益を理由として国民の基本的人権を制限しようとする政治家と相通じるものがある。彼らが壮士ぶって国益などと叫ばなくても、そうしたときは大連立を求める声が国民の間から自然に出てくるものなのである。そういうときしか大連立など成立しないし、またそういうときでなければ大連立などやってはならないのである。
インド洋における給油活動を継続しなければ“国益が損なわれる”と多くの国民はいまや考えていない。その最大の原因は、自公“合体”政権の外交防衛を担当する者に信用がなくなっているからである。北朝鮮の核問題に対するわが国の対処は、完全においてきぼりである。アメリカにすがって6ヶ国協議の一員でいるだけである。これは拉致問題に対する方針を誤ってしまったからである。防衛については、現在明らかになりつつある“防衛疑惑”をもった彼らが信用しろという方が無理であろう。このふたつのウイークポイントを補い、アメリカの後押しをもらいたいと福田首相は訪米したのだ。ブッシュ大統領から望みどおりの“お言葉”をもらったが、そのブッシュ大統領がわが国の国民に信用されていないのだから意味はない。
このように原理原則に立ち返って大連立騒動を総括すれば、事態は自公“合体”政権に対して厳しくなっていくのである。小沢民主党代表や民主党の評価が下がるのは一時的なものであろう。この問題で小沢民主党代表や民主党を非難するのはほどほとにしていた方が良い。誰にも間違いはあるものである。政治は、未遂犯を罰してはならない。口を酸っぱくしていうように、大切なことは戦列を乱さないことである。戦線を強化することである。私にいわせれば、小沢民主党代表を豪腕というのも多分に虚像に捉われたことだと思っている。しかし、虚像も実力のうちである。その力を戦線から離脱させることは愚かなことである。大切なことは虚像を実像に変えることなのである。
それでは、また明日。