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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2011年1月18日 火曜日 (第2回)
テーマ 「家賃滞納トラブル」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | さぁ、ラジオの前のあなたの生活を応援するごごばん!法律クリニック。毎週、現役の弁護士の方に登場していただき、ご近所親戚とのトラブルや仕事先でのもめ事など、みなさんに身近なトラブルの法律上の問題について伺っています。今日も、スタジオには白川勝彦法律事務所、白川勝彦弁護士にお越しいただいています。今日も宜しくお願い致します。 |
話者名 | 話の内容 |
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では、さっそくなんですけれども、今日の相談なんですが、ご相談、北区にお住まいのマリコさん。39歳の方からの相談のメールなんですが…さっそくご紹介しましょう。今の賃貸マンションに住んで2年なんです。最近運送業をしている主人の仕事も少なくなりまして、子供にもお金がかかりまして生活が厳しい状態です。そんな中、家賃の支払いが、家賃の支払いが一ヶ月滞ってしまったことで、貸主から突然、部屋の明け渡しを要求されてしまいました。お金ができればすぐにでも支払う意思はあるんですが…こういう場合部屋の明け渡しに応じないといけないのでしょうか?どのような手段で解決をすればよいのでしょうか?ということですね…まぁ、お金を滞納しちゃうのはよくはないのですが、たった一ヶ月でこー言われちゃったってそーはと思うんですけど、どーなんですかね? 先生。 | |
白川 | まぁ、極めてごく…身近にある質問、ケースだと思うんですね。 ただこれをね、深く考えるといろんな…実は深い問題があるんですね。 上柳さんは、どの辺りが最大の問題だと思いますか? |
堀 | この一ヶ月で突然ってところかな? |
上柳 | そう、一ヶ月でやっぱり突然払う意思はあるのに、一ヶ月で突然…出て行きなさいという、まぁ貸し手の方が力が強いとはいえ… |
白川 | 2年間住んでたわけですよね? |
上柳 | そいう実績もありますよねー。 |
白川 | うーん、僕は逆に聞きたいのは、たぶん契約書には一ヶ月でも遅れた場合は出て行きなさいと、いう契約条項があるんだと思うんですね。そういう、まぁ、そういう契約自由の原則ですから、そういう契約があったら契約は守らなければならないという大原則がありますよね。 |
上柳 | 結構、一ヶ月でも遅れたらダメよって書いてある契約書ってあるわけですね。 |
白川 | うん、君だってそれは違法だとは言いませんよね。 |
上柳 | あー、それはOKというふうになれば。 |
白川 | いや、だからといってね、じゃあ出ていかなきゃならんかっという、こっからがまぁ僕ら実務家の問題なんですが、まぁ出て行けばそれはそれで直ちにね、一ヶ月あれば、出て行こうといえば出て行けますよね。ただ、逆に本人が、この方が出ていかないと言った場合に、それをじゃあ強制的に出て行きなさいというのは、これ強制執行というんですけど…。 実際は、一ヶ月じゃとても間に合わないでしょうね。最低でも3〜4ヶ月家主さんは裁判を起こして、その裁判に勝たなければ、あの、まず強制執行できませんよね。だから、現実的にはこの方は出てく必要ないです。 |
上柳 | なるほど、裁判になったとしても、裁判中は出ていく必要はないという。 |
堀 | いやー、時間かかりますから。 判決で強制執行、勝たない限り大家さんは出て行きなさいと、強制はできませんから。 |
白川 | そいういう面では、出ていかなきゃならないでしょうか?というのに対して出ていかなくても実際は強制的に出ていくということにはならないでしょう。 |
上柳 | なるほど、なるほど。 |
白川 | ただ、どのような手段で解決すればいいんでしょうか?というここが私、キーだと思うんですね。 例えば、ダイヤモンドの広告をしたとしますね。「はい、これ11万で売ります」と。 ところがね、いざ買おうと思ってきたんだけど、「私、どうしても8万円しか用意できないんです」と…「来月ね、3万円払うから、私11万円でけっこうだから、払う、来月払うから、8万円持ってきたんだから、3万円だけ足らないんだから売ってよ」と、言った場合、えー、宝石やさんは売る義務がありますか? |
上柳 | いやー、これはよっぽど仲良ければあれですけどもね… |
白川 | でしょ?だから、こういうのはだから一回限りの契約だから、だから「11万といったものを8万円じゃ売れませんよ」と。来月、たとえば3万円払うと言ってもね、それは確かでないから、「いや、やっぱり11万揃って、揃えてもらわんと売りませんよ」という、こういうのは、だから契約書に書いてあろうが無かろうが、いわゆる一回限りの取引だからそうですね、契約関係なかろうが… |
上柳 | なるほど、なるほど。 |
白川 | この家賃だとかですね、例えば、労働だとか、あるいは貸金だとか、ようするに、長期の間こうしてこーゆー風にして返しますよとかって、決めごとは決めごとですよね。こういうのを、継続的取引関係というんですよ。だから、たった一回の事のやり取りじゃなくて、継続的に、ある債権債務を履行する、と。あるいは、義務を果たすという、そういう中の一トラブルなんですよね。 そういう場合に、たった一回払わなかったからといって、それでもって契約上「一回でも遅れたら出て行きなさい」と書いてあるけれども、はたしてそれで明け渡し義務があるか、ないか、という問題なんですね。 ところが、えーじゃぁちょっと言いましょう。今月は払えなかったと、あるいは先月払えなかったと、じゃあ、先月払えなかったものが、今月はどうして払えるんですか?という、ある面では実は今月も払えないという、ひとつのあれじゃないですか、予兆でもあるわけじゃないですか。ということは、もうこの方は払う意思はあっても、意思があったって、結局は払えるか払えないかっていう事実が問題なわけですよね? |
上柳 | 一回払えなかったこの事実を見れば、来月必ず払うとは、そういう証拠にはならないですよね。 |
白川 | じゃあ、「先月は払えなかったですよね」と。「いやー、払う意思はあるんですが」と言ってもね、「どうして、じゃあ来月は払えるんですか」と、要するに、あくまでも払うか払わんかという事実が大事なわけですよ。「意思はあるんです」と言ってますから。ですから、やっぱり一回払えなかった、その理由が結局たとえば退職しちゃって、あるいは、失職しちゃってもう収入がないとなったら、もう今後家賃を払える可能性が無いと思えば、たった一ヶ月でも、今後払えない可能性があるから、たった一回の払わなかったってのを理由にね、明け渡しの裁判を求めることはできるでしょうね。 |
堀 | でも、すぐに裁判に持っていくっていうよりも、話合いとかもできますよね? 大家さんとね… |
白川 | いや、それはもちろんそれが一番大事なことです。 |
上柳 | あと、生活を見直して、こうやるから「あのー、来月払いますから!」っていう、なんかこう、あんまり大家さんもガンガンに言っちゃうと、余計関係が悪くなると、こう、払わなかったりするじゃないですか。 |
白川 | まぁだからね、結局、払わなかった・払えなかった理由をちゃんと説明して、「先月は、払えなかったのにはこんな理由があって」と。「しかし来月は大丈夫ですよ」って言ったら、大家さんもね、たぶん、一回払わなかったらと、契約書に仮に書いてあったとしてもですよ、出てけなんて言わないと思いますよ。 ただし、実際上の問題としてはね、ぜんぜん払えなかったのか、それともね、「半金だけは払えるんだけど、残りは足らないんだけどまってくれ」とかっていう、まぁ極めて常識的な考え方だけども、裁判所が例えば、最終的に裁判所がね、判断しなきゃならん時に一番大事なのは、そういう継続的な取引関係。たった、このいち条文上は、例えば反しているようだけども、この一事でもって、この契約関係をゼロにすることが正しいのか、正しくないのかという判断をするうえで、一つのケース。だから、ぜんぜん払わなかったというのよりも、例えば半分は払おうと、払ったんだけども…というあたりを見て、だから、ぜんぜん払えないんじゃなくて、来月は払う可能性があるんだと見たら、たった一回の支払い不能だからって、出てけって、裁判所は実際問題、そんなことは言わないでしょうね。 |
上柳 | まぁ、借りている方もやっぱり、できるだけ実績を作っておくといいのかな… |
白川 | そういうことですよね。だから、ほんとにここでね、昔はとにかく、借してる人が強かったんですよ。でも、大家は強いんだからという。僕ら弁護士になりたてのころは、そうでしたね。 今は、必ずしもそうじゃなくて、家賃を払わない場合は、やっぱり賃貸借のもとなんだから、割合に、そういうのは払わないってことについては厳しいですね。ただ、一回だけでダメかどうかは別です。 |
上柳 | はい、お時間になりました。白川弁護士でした、どうもありがとうございました。 |
上柳昌彦氏 = ニッポン放送アナウンサー ・ 堀ちえみ氏 = タレント曜日パートナー (文中敬称略) | 第1回 | TOP[t] | 第3回