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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2011年2月15日 火曜日 (第6回)
テーマ 「相続人について」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | ラジオの前の「あなたの生活」を応援する「ごごばん!法律クリニック」の時間です。今日もご近所、親戚とのトラブルや仕事先でのもめごとなどみなさんに身近なトラブル「法律上の問題」についてお話を伺います。スタジオには白川勝彦法律事務所、白川勝彦弁護士です。今週も宜しくお願い致します。 |
白川 | 宜しくお願いします。 |
堀 増山 | 宜しくお願いします。 |
上柳 | 今日はね、程度の差で結構悩んでる方は多いと思いますよ。この相談内容は。東京都のタカシさん、56歳男性の方からの相談メールです。 |
話者名 | 話の内容 |
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増山 | 私の地元は、山形県の田舎です。私は今、東京で生活をしていて、妹夫婦は実家で暮らしています。親は、父は亡くなっており母は健在。父のお墓は地元にあるのですが、先日、母からお墓に関する話があり「もし私が死んだら、長男であるあなたが相続するのよ」と言われました。しかし、私は東京にいるので、とても管理を続ける自信がありません。同居している妹が相続した方がいいと思うのですが、お墓は必ず長男が相続をするものなのでしょうか? |
上柳 | これはねー、実家が遠く離れていてそこにお墓が結構みんなあるんじゃないですか? あると思いますよ! これ。 |
白川 | あると思います。 |
上柳 | なんとなく、「お墓は長男だよな」ってイメージがあるんですけど…白川先生、どうなんでしょうか? |
白川 | その前に、人はいずれ死にますよね。人は死ぬと何になるのでしょうか? |
増山 | 骨?……(笑) |
堀 | 骨って思いました、私も。 |
白川 | 骨だって誰かが荼毘にふさなきゃ骨にならないでしょ? |
堀 | そっか、そうですよね… |
白川 | まず、死体になりますよね。普通でいうなら、荼毘にふせば遺骨ということになりますよね。私は神様になるか仏様になるか、こういう難しい議論に関しては分かりませんが、法律的には、人は死ぬと物になると…ということを言いたい。 |
上柳 | あーなるほど! |
白川 | 物ですから、誰に所属するのでしょうかね? |
上柳 | ん〜それは長男っていうのが… |
堀 | もう日本の仕来りの様な。 |
白川 | 堀ちえみさんのその指輪も私の時計も、増山さんが今持っているペンにしろ、誰も持っていない無主物というのもありますけど、普通、物っていうのは誰か所有者がいますよね。さて、死体、遺体、もしくは遺骨というのは誰のものなのでしょうか? |
上柳 | これはやっぱり相続すべき人が何か法律で決まっていて、その人の物に自動的になるんじゃないでしょうか? |
白川 | 相続人の物なのですよね。 |
上柳 | あ〜、相続人ね。相続人って言うのですか? |
白川 | 物ですから、相続人に属する物です。 |
上柳 | 法律では、もうそういう言葉になるのですね。 |
白川 | それに対する相続は、原則として遺言があれば遺言の通り。それから、もし相続が無ければ、この前話した通り ─ 普通、相続人全員が共同して相続するというのが大原則というのは、この間勉強しましたよね。これに対する例外が、民法上書いてあります。それをちょっと読んできたので、格調高く上柳さんから読んでいただきたいと思って。 |
上柳 | 民法、祭祀に関する権利の継承がありますね。第897条。『系譜、祭具および墳墓、お墓ですかねこれ。墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が継承する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が継承する。』これでいいですか? |
白川 | これで結構です。前条の規定ってのはですね、相続の大原則、通常まずは、遺言があれば遺言。遺言が無い場合は、相続人が共同して相続するという大原則ですね。前条のその規定にかかわらず、慣習に従って主宰すべき者が継承すると書いてあります。これはですね、昔はいわゆる長子、家督相続、長子単独相続というのがありましたね。要するに、家はだいたい長男が、それこそ単なる祭祀に関することだけじゃなくて、全財産を長男が相続してたわけですね。私なんか次男ですから、お前には何もいかないよと。昔は家督相続で、長男はすごく大きな権利を持ってたわけです。昔は結婚するんだって、家長の承諾がなければ結婚できなかったんですよ。 |
上柳 | それだけ力があったんですね。 |
白川 | それがもう、昭和20年以前はそういう民法は日本が支配してたわけですから、その名残があるんですね。だから、やっぱり長男がするべきものなんですよ。 |
堀 | だって、そういう風に親からも言われますし。 |
上柳 | あんたがね、いつかはねっていう… |
白川 | それはですね、ここにもこういう風に書いてある通り、被相続人は亡くなった方の事ですよね、タカシさんの場合だとしたら、このお母さんっていうことでしょうね。お母さんの指定に従って「あなたが管理・相続してほしいよ」って言ってるわけですが。ただ、現実には、こういうケースの場合はですね、系譜がありますが ─ 家系図みたいなもの、場合によっては、仏教の家なら過去帳ってのがありますよね。そういうものじゃないでしょうか。祭具というのは、お仏壇とか位牌とか、あるいは木魚とかね、あるいは真ん中に高い仏像があります、そういうものが、祭具じゃないでしょうか。 |
上柳 | 仏壇、仏具ですね。 |
白川 | まさに、墳墓はお墓そのものですよね。そういう場合、普通妹さんが同居されてるんですか? そうすると、結局妹さんがm、普通ならば仏壇ならびに位牌等も、だいたいお参りしたりすることになりますよね。と、したならば、その人が普通は墳墓、お墓の方も…ということじゃないでしょうか。 |
上柳 | 並んでますもんね、系譜、祭具および墳墓と書いてありますからね。 |
白川 | そういう風にするのが今の慣習じゃないかなと思ってますが、ただ、いつもここで問題なんですが、法律の条文というのは「こうしなさい」っていうことじゃないんですよね。要するに、相続というのも、例えば…いまお墓だって高いでしょ、東京なんかじゃ。1000万くらいかかる。 |
上柳 | なかなか大きいのは、ちょっともう無理ですもんね。 |
白川 | 高い場合もあるし、仏壇だって北陸の方なんかだったら1000万くらいの仏壇があるんですよ。 だから、争った時に法律はこういう風にして決めますよっていうのを書いてあるのであって、あなたが相続しなさいと義務を定めてるものじゃないんですよね。 |
上柳 | 困った時には参考にしていいけれども、基本的にはあなた方で決めておきなさいよという… |
白川 | 争っている時に、裁判官が、あるいは国民がこれに従って決着をつけようというのが法律ですから。ですから、お母さんが「やっぱりあなたが相続して欲しい」というのがあったとしても、基本的には相続人にあたる妹さんとこのかたお二人でしょうか、話し合って決めればいいし、それに反することを家庭裁判所が決めるってことはないと思います。以上が、だいたい大原則じゃないでしょうかね。 |
上柳 | 拠り所は法律としてはあるけども、まあ、話し合って納得してやってなさいよって。 |
白川 | 基本は ─ 大原則はね。もめた場合はこういうのがありますよっていう例外規定ですね。 |
上柳 | なるほどねー。 |
白川 | お分かりになったでしょうか。 |
上柳 | いや、よく分かりました。そして法律の意味合というのも、よく分かりましたね。「こうしなさい」と言っているわけじゃないないんだと。 |
白川 | 普通はね。 |
上柳 | よく分かりました。参考になったのではないでしょうか。みなさんも民事に関する問題、色んなケースありますけれども、まずはお近くの弁護士事務所等々へもご相談下さいませ。こういうご質問等々ありましたら、こちらへお寄せ下さい。 |
増山 | |
上柳 | 今日は祭祀に関する権利の継承なんて、緊張しながら読んじゃいましたけども。白川弁護士でした、どうもありがとうございました。 |
白川 | ありがとうございました。 |
増山 堀 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー / 堀ちえみ氏 = タレント曜日パートナー (文中敬称略) | 第5回 | TOP[t] | 第7回