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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2011年3月1日 火曜日 (第7回)
テーマ 「未成年者の契約について」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | ラジオの前の「あなたの生活」を応援する「ごごばん!法律クリニック」。今日もご近所、親戚とのトラブルや仕事先でのもめごとなどみなさんに身近なトラブルの「法律上の問題」についてお話を伺います。スタジオには白川勝彦法律事務所、白川勝彦弁護士です。今日も宜しくお願い致します。 |
白川 | こちらこそ、宜しくお願い致します。 |
増山 | 宜しくお願い致します。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | それでは早速今日の相談内容ですけどもね、群馬県のアキさん、50歳の主婦の方からの相談メールです。 |
増山 | 一人暮らしの娘が執拗な勧誘をうけて50万円もする英会話教材のローンを組んでしまいました。娘には私が仕送りをしている状態なので現実的に娘一人では支払いができず困っているようです。購入したのは一ヶ月前なのでクーリングオフは無理でしょうが、未成年者の契約なのでなんとか解約できないでしょうか。 |
上柳 | これはまたこの春も同じようなことが起きるような感じがするんですが、白川弁護士どうですかね? |
白川 | しかし、このアキさんですか、なかなかある面では勉強してますね。 まずクーリングオフっていう言葉を知っているし、未成年者の契約なので解約・取り消しできないでしょうかと、いうようなことを知ってるんで、なかなか、ある面では普通の主婦の域を超えてますよ。相当しっかり、かしこいお母様ですね。 最近、子供さんは生意気と言ってはかわいそうですが、大人ぶってますよね。もう、15〜6歳になれば、相当なんでも出来るという風に考えているんですけども、この際、やっぱり大原則を知っておいた方がいいと思うんですね。 |
上柳 | ぜひぜひ、お願い致します。 |
白川 | 要するに、学生だから云々じゃなくて、20歳になるかならないのが大事なんですよね。 |
上柳 | 20歳…はい… |
白川 | 20以前の人は、なんて言いますか? |
上柳 増山 | 未成年。 |
白川 | 未成年者はですね、単独で契約とか法律行為は出来ないんですよね、というのが大原則なんです。 |
上柳 | はい。 |
白川 | 結婚とか、そういう一部例外はありますけども、それ以外の、いわゆる物を買ったりするような事っていう大原則は、未成年者は単独では出来ないんです。法定代理人の同意を得なければならないと。 |
上柳 | 法定代理人… |
白川 | はい。凄い名前が出てきますが、お父様やお母様の同意がないと、基本的には法律行為はやれないわけですよ。 |
上柳 | なるほど、なるほど。 |
白川 | ただしですね、大原則はこう書いてあるんです。法律上『未成年者が法律行為をするにはその法定代理人の同意を得なければならない』 ─ だから、同意がないとできないんですよね。ところが、実際何も出来ないかというと、同意を得ないでやった法律行為 ─ 今回のこの50万円もする英会話の教材を買ったというやつですね ─ これは、法律行為ですよね、ひとつの契約をしたわけですから。 |
上柳 | すごい契約ですよね、しかもね… |
白川 | 『前項の規定に反する法律行為は取り消すことができる』と。だから無効ではないんです。 |
上柳 | あー!! |
白川 | 一応、契約は有効なわけです。契約そのものは成立しているんだけれども、取り消すことは出来ると。そして、もう一つありまして…第三項にある『第一項の規定にもかかわらず法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも同様とする。』 ─ 難しい言葉ですけども、有体にいえば、例えばこの娘さんに月12万くらいでしょうかね? 13万くらいかな? あなたこの中で生活をやりなさいよと、だからその範囲内での買い物くらいは… |
上柳 | あー、なるほど。それはいちいち同意がなくてもいいよと。 |
白川 | だから、日常生活に必要な ─ 学生さんならば、例えば12〜3万で、その中で2万とか3万くらいの物を買うのは…だって、それまでもし取り消されたら、もう子供さんの場合は物を買えなくなるじゃないですか。ただ、これも未成年者でも例えば小学生みたいな、見るからにもう10歳みたいな場合は、たぶんこれにはあたらないと思います。そもそも、法律行為をしても無効と似ているような感じがしますよね。まぁそういうことです。ですから、この場合は基本的には取り消すことが出来ます。 |
上柳 | 出来る! |
白川 | ですから、取り消すのは法定代理人の権利ですから、法定代理人が「娘が買ったんですが、これは取り消させてもらいます」と。ただし、20歳を過ぎてたらダメですからね。そういうことですね。 それから、娘さんが実際は20歳未満だけど「私は20歳を過ぎてるよ、だから私単独で」と言ったとしても、そのくらいは詐術 ─ 要するに人をだます術を使ったというようにしか捉えませんから。 |
上柳 | 年齢詐称とまでは言えないと!? |
白川 | 言わないという事だから、むしろ未成年、もしくは未成年前後の人の場合は、取引をする大人側の方が注意してやりなさいと。あくまでも未成年者を保護しよう、という規定ですから。大丈夫ですね。基本的には、だから50万も払うのは娘さんにも大変でしょうし、同時に親御さんにとっても大変な額でしょうから。ただし、20歳を過ぎた頃に、この業者さんから「どうしますか? あなた取り消すことが出来るんだけども、取り消しませんかね?」という通知が来るかもわかりませんから、その時は遅滞なく買わないんだったら買わないで、という風な通知を1ヶ月以内に出さないと、逆にもう追認したものとみなされますから、払わなくちゃいけないんですね。 |
上柳 | 向こうが聞いてくる時もあるわけですか?? |
白川 | あります。取り消されてもしょうがないですから、例えば19歳くらいなんて微妙じゃないですか? だから、後で気がついて、この人のように未成年だったって場合は「買ったんですけどもどうしますか?」って。 |
上柳 | それ無視したら、認めたってことになっちゃう。 |
白川 | 認めたという風にみなされちゃいますから。 |
上柳 | じゃあ、そういう書類もちゃんと目を通して見ておかなくちゃいけないですね。 |
白川 | そうですね。だから、そういう面では、なんでも子供さんのことを知らせなさいと言って東京に送り出すことも、大事なんじゃないでしょうかね。 |
上柳 | そうですね。 |
白川 | それから、この場合は英会話教材のローンとありますよね。ということは、使ったりして、もう現に聞いたりしてると思いますよね。 |
上柳 | 一部使っちゃった場合どうしますか? |
白川 | その場合でも、僕は大丈夫だと思います。 |
上柳 | なるほど。 |
白川 | それから、もう一つはですね…たぶんローンで買ったんでしょ? ローンで買ったんだから、まだ払ってないわけですよね。だから、請求するのは業者の方が請求するわけです。だから、払われないほうがいいんですよね。こういう問題があるから、業者は未納だったとしても、実際は裁判まで起こすこと事はないんですよね。 |
上柳 増山 | あー、なるほど、なるほど! |
白川 | 請求がきたら「こういうことだから私は払えません」と言ってください。 |
上柳 | そういうもんなんですね。 |
白川 | だから、やっぱり物っていうのは払うか払わんか、払ってから取り戻すかってのと。 |
上柳 | 大変ですよね~! 既成事実をつくっちゃうと。 |
白川 | そういうことですよね。 |
上柳 | 今日はね、やっぱり白川先生の、この「20歳」─ この境目の大きさってのを、よく勉強しました。この春、一人暮らしされるお子さんも多いと思いますんで、ご注意下さいね。 色んな法律の相談お待ちしております。こちらへどうぞ。 |
増山 | |
上柳 | 白川勝彦弁護士でした。来週も宜しくお願いします。 |
白川 | ありがとうございました。 |
上柳 増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第6回 | TOP[t] | 第8回