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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2011年8月1日 火曜日 (第26回)
テーマ
「債務整理は家族や会社に内緒で出来ますか?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日は、ラジオの前の皆さんの「法律の問題」についてお話をうかがいます「ごごばん! 法律クリニック」。スタジオには、「白川勝彦法律事務所」所長、弁護士歴39年の白川勝彦弁護士です。宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくどうぞ。 |
堀 | 宜しくお願い致します。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | それでは早速、今日の相談内容をご紹介いたしましょう。今日は匿名の男性からのメールです。 |
上柳 | 私は、ギャンブルが原因で複数の消費者金融から借り入れをしていて、いま債務整理を考えています。家族や親類が保証人になっているものはないので、できれば内緒にしたままで債務整理をしたいと思っています。また同じく、会社にも債務整理をしたことは伏せていたいのですが、そういうことは可能なのでしょうか?借金をしている事実を内緒にしたまま、債務整理というものをしたいということのようですけどね。どうなんですかね、これ。 |
白川 | 匿名さんからのこのメールですけども、まさに、実は多額の借金を作ってしまって月々の返済に困っている人がいちばん心配なのが、その点なんじゃないでしょうか。内緒でできるならやりたい。 債務整理、債務整理と言うけども、本当に内緒でできるんだろうかというところが分からなくて、そして、グズグズと頼むことをしてないで、今日まで来ている人多いんじゃないでしょうか? だから、非常にいい質問なんですね。私のところも債務整理の仕事をやってますけども、実際に受任した人の8割が妻には内緒で ─ 夫には内緒で、もちろん会社には内緒で、と。そのくらい、実はそういうことが多いんですね。 |
堀 | だって、複数の消費者金融からですよ。 |
白川 | これ実はね、深刻な問題があると思うんです。借金をしていること自体、それ自体恥ずかしいことでもないし。だって、住宅ローンなんて抱えてれば、多額の借金を持っているわけでしょ。借金を借りた理由がはっきりしているから、別にそれ自体は「俺、借金持ってるよ」ということで…殆どの人が借金持ってるんじゃないですか。 だから、こういう風にギャンブルでとか、家族に内緒で借金を作ってしまった、と。その使い道が、実は、夫にはあんまり言えない、あるいは妻には言えないという。だから、借金を作った原因が内緒だから、したがって、その解決も内緒にしたいということなんじゃないですか。 |
上柳 | そりゃそうでしょうね! 『あんた、なんでこんなお金を一気に借りたの!』って。『いやいやいや…理由があって…』と。 |
白川 | だから、私は債務整理を長年やってますけども、最近こういうことを考えているんです。『多額の借金を作ってしまったことは、たいした問題じゃないんだ』と。『その借金と、どのように立ち向かっているかどうかが問題なんですよ』と、言いたいんです。なぜなら、借金の問題は、必ず、解決する道はあるんだから。 |
上柳 | 解決する道が、ある! 必ずある!! |
白川 | 必ずあるんだから、立ち向かえばいいんだけど、なかなか立ち向かおうとしないで、なんとか内緒にできないかなと。弁護士事務所では、内緒だと言ってるけども、本当に内緒なのかなと。 |
堀 | 債務整理の、三つの方法マメ知識。白川先生の小冊子ですね。秘密厳守・親切丁寧・信用第一。 |
白川 | 結論から言ったら、任意整理なら、完全に内緒で行えます。 |
上柳 | 任意整理というのは、簡単に言うと? |
白川 | 任意整理というのは、裁判所は通さないで、私が依頼者さんの代理人となって、違法金利があったりしたら減額なんかにしますよね。逆になかったとしても『元金にはこれから金利を付けないでよ』と。『返すから』と。『その代わり、苦しい中で返すんだから、金利は付けないでよ』と。しかも、『月々苦しいんだから、長期の分割にしてよ』と。──と、いう手続きを、普通、任意整理といいます。 |
上柳 | 色々条件を、白川さんなり弁護士の方が交渉して… |
白川 | 債権者とガンガンやるわけですよ。そして、そういうことだから、もう任意整理ということで和解して。 |
上柳 | 『返さないと言ってるわけじゃないないんだ』と。条件をちょっと緩めたら、返せるんだと。 |
白川 | あるいは、法律的に減らす要素があるようだったら、とっちゃならない金利だから、これは当然減らすよと。と、いうようなことで和解を取り付けて、和解に基づいて、あとは支払っていくというのが、任意整理といいます。 ところが、それでは払いきれない場合、裁判所の力を借りて行う債務整理が、破産。これ、一番聞きますよね。チャラにしてもらうというやつですよね。それから、任意整理はですね、民事再生、個人再生ともいいますが、大雑把にいえば、借金を5分の1にしてもらうんです。そして、3年とか5年の期間に返しなさいと。そして、裁判所が決めた通りに返せば、残りの残額は返さなくても、実際上は免除されるというのも、民事再生、あるいは個人再生という同じことなんですが。 |
上柳 | でも、裁判所を通しますよね。と、なると、なかなか秘密裏に、家族に黙ってというのは難しそうですね。 |
白川 | 破産でも民事再生でも、罰として別に官報に載せるんじゃないです。 |
上柳 | 官報に載る…貼りだされるんですね。 |
白川 | 上柳さん、堀さん、官報って見たことありますか? |
上柳 堀 | ないですね。 |
白川 | 上柳さんで見たことないんですから。官報、これ毎日発行されているんですよ。土日を除いて。いろんな、国の新しい法律が出来ました、と。大事なことだから、国民に広く知らせしめるという、そういうのが官報という性質なんですよ。 |
堀 | 厚生労働省の国家試験とか書いてあります。 |
白川 | 要するに、大事なこと、国民に法律が新しく制定されましたよというのは、当然、多くの人に知ってもらわなくてはならない。そういうものを載せるんです。国会議員なんてやってますと、日々取っておくだけで、山になっちゃうんですよ。 しかし、官報に破産とか民事再生を申し立てた場合は、官報に載せますというのは別に、罰として載せるわけじゃないんですね。そこを勘違いしないで欲しいんですよね。だって、破産というのはチャラにすることでしょ。それから、民事再生ならば人の借金を5分の1にするわけでしょ。と、いうのは、された方の立場になったら、たまらないですよね。だから、この人についてはしましたよということだから、それを知らないで取引したい人は、その人にとっては被害だから。 だから、一応知っててもらうために載せるのであって。ただ載せるのはこの程度です。こういうものですから、写真があるわけでもないし。 |
上柳 | 結構細かく、住所まで書いてありますね。 |
堀 | でも、やっぱり破産の数がすごいんだ! これ、一日ですよね? やだな…載りたくないなぁー。 |
白川 | 一日です。号外が出る日もありますから。だけどね、上柳さんもいままで見たことなかったでしょ? 堀さんも初めてでしょ? だから、特別な関係者以外、見ないんですよ。だから、これが一番難しいんですね、聞かれる話は。じゃあバレないということですかというと、人の権利義務に関する重要なことだから、知っておかなくちゃいけないから載るんですよ、と。 で、官報というのは誰でも見られるんです。だから、誰でも見られるものに載るんだから、内緒に出来ますかと言われても、100%内緒とは言えませんね。 ただ、事実上、特殊な ─ 金融機関だとか、そういう人以外はほとんど見ないから、『貴方の関係者の中にこういうものを見たりする人がいなければ、これを通じてバレることはないでしょう』ということを、よく言うんですけどね。 |
上柳 | 官報に載るということだけなんですね。 |
白川 | 罰として載せるわけでも、なんでもないんです。ただ、破産とか民事再生というのは ─ 人の債権をゼロにするというのは、その権利を害するわけでしょ。否応なしに5分の1にしちゃおうというのも、圧縮される方にしてみたら大変ですよね。だから、そういうことなんだからということで、罰でもなんでもないんです。そして、大事なことだから官報に載せるんで、知られるんですか? ということなんですけども、非常に曰く言い難しい。だから、官報に載ったといっても、バレる事は実際ないと思います。ただ、自分が破産したというのは厳然たる事実ですよね。それを、夫に、妻に、内緒にしているというのは、逆に、それで結婚生活本当に大丈夫ですか? と僕は聞くんですよ。 |
上柳 | なるほどね。いやー、勉強になりました。官報に載るんですね。白川勝彦弁護士でございました。どうもありがとうございました。 |
白川 | どうも、ありがとうございました。 |
堀 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏 = ニッポン放送アナウンサー / 堀ちえみ氏 = タレント曜日パートナー (文中敬称略) | 第25回 | TOP[t] | 第27回