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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2011年12月27日 火曜日 (第46回)
テーマ
「借金の過払い金は、何年前のものまで返還出来ますか? また、金融会社と再び接触することはありますか?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日は、ごごばんリスナーのあなたの「法律の問題」についてお話を伺う、「ごごばん!法律クリニック」。今日が、今年最後のご出演になります。スタジオには、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴39年の白川勝彦弁護士です。どうぞ、宜しくお願い致します。 |
白川 | 宜しくお願い致します。 |
増山 ・堀 | 宜しくお願い致します。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 今日の相談内容です。匿名の男性の方 ─ 49歳の、このメールです。 |
増山 | 9年前に、250万ほどあった借金を完済しました。しかし、最近になって知り合いから「それって、過払い金があるんじゃないの?」と言われました。確かに、過払い金の話は知っていましたが、また金融会社とかかわらないといけないのかと思うと、ちょっと腰が引けています。一度弁護士さんに相談しようと思うのですが、僕自身が金融会社と接触することはあるんでしょうか。また、9年前の過払い金なんて、素直に返してくれるのでしょうか? |
上柳 | この番組をお聞きの方はもちろん、最近では利息の払い過ぎがあるというのは、わりと普通に知られるようになりました。が、一歩進んで誰が交渉するのか、いつぐらいまで遡れるの?… こう聞かれると、分からないこといっぱいありますね。 |
白川 | 今日のは最後にふさわしいので、ちょっと難しい話をしますね。 ちえみさんは、不法行為って知っていますよね? 故意または過失によって、他人に精神状態の苦痛を与えたというのが、不法行為。それが … 民法709条というのがあるんですが … その前に、一見似ているんですが、不当利得という言葉もあるんです。 不当利得というのは何かというと、 「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」続いて、705条に 「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。」こう書いてあります。 これが、いわゆる不当利得といわれるもの。ただ、故意または過失によって損害を与えたんじゃないけども、法律上の原因なくして利益を受けた者は、基本的に「それを返しなさい」と。これを、不当利得返還請求というんです。だから、不法行為とちょっと違うんですね。過払いというのは、この不当利得に関することなんです。 |
堀 | 期間とかあるんですか? |
白川 | それは、後で話しますね。 そもそも、その前に、不当利得とは何なのか。あるいは、貸金に関する不当利得というのはどういうのかというと、これまで色んなところに分けて入りましたが、貸金というのは、契約自由の社会なんだけども、利息制限法というのがあるというのは、何度もお話しましたね。それには、こう書いてあります。 10万円未満までは年20%まで、10万以上100万未満は18%、100万円以上の場合は15%の金利と、書いてあるんです。『それ以上は取ってはならない』と。 契約自由の原則だけども、それ以上は取ってはならない。取ってはならないということは、仮にこれに反したとしても、『法律上は無効だから、取れませんよ』ということですね。 これが、さっきの“法律上の原因なくしてとった金利”ということになります。 だから、利息の定めそのものは有効なんです。ただし、『これを超えるものは、この範囲内ですよ』ということになるんですね。 一方、出資法というのも何度か出てきました。これは、金の借り貸しに関するもうひとつの法律なんですが…。 これは、利息制限法の利息と同じく20%となったんですが、ごく最近までは29.2%でした。29.2%以上の高い金利で金を貸していたら、これは刑罰をもって罰しますよというんです。だから、金利の定めが無効になるだけでなくて、そもそも、金の借り貸しをしたことを罰しますよということ。 刑罰に反するようなことは、悪いことですよね。悪いことだから公序良俗、公序に反するから無効という理屈で、これは、もう返さなくていいわけです。金利に関する定めが無効なだけでなくて、そもそも貸したということ自体が違法なんだから。 この人は、250万円を仮に…現実には現金を受け取ったとしても、返す必要はない。利息制限法に超えた場合は、利息に関する定めが無効になるだけなんです。ところが、出資法に反した場合は、『契約そのものがダメだよ』と。刑罰でも罰せられますよ、ということなんですね。この間の金利が微妙なんですね。これが、法律上は無効だけども、しかし、これは受け取ってはならない金利ですから。受け取った方にしてみたら、法律上の原因がなくて受け取った、と。別に不法行為と違って、故意または過失によって損害を与えたわけじゃないけど、法律上受け取ってはならないものを受け取ったから、あなた返しなさいと。 だから、不当利得返還請求権というのも、ひとつの債権ですから時効がありまして、10年です。 |
堀 | 10年! ギリギリじゃない? |
白川 | 時効に関する定めも、強行規定です。ちょっと、この場合は別にしましょうというのをあらかじめ決めておくこともできませんから。それこそ、10年に1日でも過ぎていたら、この時効で業者は払う必要がありません。 |
堀 | 250万だったら、どれくらい帰ってくるんですか? |
白川 | 大雑把にいうと、250万借りたとしたら10%が違法金利だと考えてください。 かつての登録業者の場合 … いまはこんなのないですが … 250万借りたら、年に25%の払わなくていいものを払った、と。それが、例えば5年間続けば、250万は返してくれるということになるわけですね。 どういう風な手続きかというのも、質問がありますね。もちろん、本人が訴訟を起こす場合もできます。ただ、ここにご質問があるように、また金融業者とも自分で起こすんですから、裁判上の交渉をしなくてはいけませんね。弁護士に依頼をすれば、全部やってくれますので。費用は高くなくて、だいたい、私どもの事務所でもそうですが、『着手金はいいですよ』と。その代わり、取り戻した額の20〜25%の成功報酬でいいですから、というところが多いのかな。 ただ、計算上はそうなんだけども、業者もなかなか苦しくて、倒産した会社がいっぱいありますよね。それから、倒産はしてないけども、殆ど支払う能力が無いというところもいっぱいあります。その辺を含めて、弁護士さんなら良く知ってますから。 いずれにしろ、私どもも訴訟によって解決する場合もあるし、話し合いで解決する場合もあります。大事な問題ですが、時間が来たので、この辺でよろしいでしょうか。 |
上柳 | 色々作戦を練るには、プロの方の知識と経験というのは必要だな、という感じです。おわかりいただけましたでしょうか? と、いうことで白川弁護士、来年もまた宜しくお願い致します。 |
白川 | 宜しくお願い致します。 |
増山 ・堀 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー / 堀ちえみ氏 = タレント曜日パートナー (文中敬称略) | 第45回 | TOP[t] | 第47回