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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年1月10日 火曜日 (第47回)
テーマ
「固定資産税の滞納で、マンションを差し押さえられてしまいました。どう対応すれば良いでしょうか?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 今年も、毎週火曜日のこの時間は、ラジオの前のあなたの「法律の問題」についてお話を伺います、「ごごばん! 法律クリニック」です。スタジオにはお馴染み、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年の白川勝彦弁護士です。今年も、宜しくお願い致します。 |
白川 | 宜しくお願い致します。 |
増山 | 宜しくお願い致します。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | それでは早速、今年最初の相談内容をご紹介致しましょう。今日は匿名の男性、42歳の方からのこのメールです。 |
増山 | 私は、マンションを買って10年になります。これまで、住宅ローンは毎月なんとか支払ってきましたが、この不景気で給料やボーナスが減ってしまい、固定資産税を滞納し続けていたところ、地元の役所から不動産を差し押さえられてしまいました。こういう場合、どのように対応すればいいのでしょうか? |
上柳 | 白川さん、最近こういう税金に関する相談が多いんです。 |
白川 | 新年早々物騒な話ですね。 |
上柳 | 差し押さえなんて、ドキッとしちゃいます。固定資産税、良く聞く名前ではあるんですけど、今日はちょっと、じっくりとそのあたりを宜しくお願いします。 |
白川 | 固定資産税というのは、文字通り固定資産。色々ありますけど、普通の人にとっては、土地と建物に対してかけられる税金と理解して宜しいんじゃないでしょうか。その税額は、固定資産税評価額というのを毎年毎年市町村が決めまして、その、おおむね一年間で1.4%です。 固定資産税評価額というのは地価とは違いますから、それも低めに算定してくれます。そんなに高いもんじゃないです。 しかし、かなり下がったとはいえ、東京なんかは不動産の価格、高いですよね。ですから、5000万の評価額があったとしたら、1年間で70万になるんですよ。2年間滞納すれば140万ですから、ちょっとばかにならない額なんですよね。 差し押さえられたということですけども、滞納したからといって、すぐ不動産を差し押さえられるというようなことはまずないんです。最近増えてはいますけど、そんなことはないんです。役場の方としては、滞納すれば手紙で払って下さいというんですが、ところが、普通の借金とか住宅ローンの会社と違って、民間じゃありませんから、電話でこまめに催促することが無いから、つい放っておきがちなんですよね。 |
上柳 | 『来てたけど、どこにしまったっけな?』ってなっちゃうわけですね。 |
白川 | 結局、役所から見たら何の反応もない、誠意ある対応がないという場合にやるというケースが殆どです。 ですから、本当は払えない事情があれば、滞納通知が来た時に、率直に言って、こういう事情で苦しいんだと。額がたまると、結構な額になりますからね。払うことは払うけども、分納にしてくれないかと言えば、市役所ですから。払ってくれれば、そんなに強行になんて言いませんから。ただ、そういうのを全然しないから、仮差し押さえなんてことになる。 |
上柳 | 無視するのが一番ダメで、すぐに連絡して、「すいません!」と言って事情を話して… |
白川 | むこうも税金ですから、払ってもらわなくちゃ困りますので。払うという意思さえ確認して、時間かかっても、こういうことで払いますと言えば、めったに強硬手段に訴えることはありませんから。だから、まず地元の市町村なんですから、率直に行ってお話をして、『払いたいんだけども、こういう事情で払えないんだ』と、話をするのが一番いいのではないでしょうか。そういうことをしないから、しょうがないから不動産に差し押さえをかけるわけです。 だからといって、すぐに仮差し押さえから公売ということになりません。なぜかというと、個人の場合は、殆どローンを持っている人が多いですね … この人もそうなんですが。そうすると、税金で公売にかけたとしても、優先して持っていくのはローン会社ですから。だから、なんとか対応して下さいよという、意思表示だと思っていて下さい。すぐ公売なんて、めったにかけませんので。 ただ、いったん差し押さえされますと、立場上そうなんですが、滞納している税金が一年分なのか二年分なのか … 時には三年分なんて人もいますよ。それは、どうやって払いますかということで、全額払わないとなかなか、差し押さえそのものは解除してくれないんですね。 ですから、大事なのは、差し押さえされる前に行けば、そういうことめったになりませんから。誠意を持って対応することなんじゃないでしょうか。 ただ、この人の場合同じなんですが、もうひとつ厄介なケースなんですね、今も話をしましたが、住宅ローンがまだ残っているでしょ? 10年前に買って、30年ローンとか多いですからね。そういうところは、一括して払えということを言うんですよ、仮差し押さえになったりすると。そうすると、額が大変なことになる。 |
上柳 | えらいことになりますね。 |
白川 | それはどういうことかというと、住宅ローンの条項に「他の債権でその人が差し押さえ等を受けた場合は、期限の利益を失う」というのがあります。 期限の利益というのは、分割して支払うというものを失うという一文が、必ず入っているんですよ。だから、意地悪で言っているのではなくて、市役所等の仮差し押さえも、差し押さえであるということには変わりないわけです。ですから、一括して支払いをして下さいということになるわけです。 |
上柳 | 契約条項に書かれている、正当な行為なわけですね。 |
白川 | そうなりますと、額も大きいですから。それも、税金だということで事情が分かれば、住宅ローン会社の方も、そっちの方は早く解決して下さいよと言うことも言ってくれるんで。 ただちに一括で支払えなんてことになりませんが、そういうことが多々ありますから。 ですから、今日一番言いたいのは、税金を免除してもらうということは出来ないんですが、しかし、そういうことにならないように努力することが大切だということを、一番申し上げたいですね。 それから、良い機会なんでこの際に言っておきたいんですが、固定資産税も税金ですよね。他の税金もそうですが、国民健康保険、国民年金保険も、保険税というんですよ。ああいうものも、債務整理の対象には出来ませんので。 今まで、債務整理をすればたいがいのことはなんとかなりますよと言ってきましたけど、こういう類は、債務整理の対象にはなりません。だから、自己破産をしてもこういうのはゼロになりません。そういうことを考えて公の事ですから、そもそも、ちゃんとすべきものはちゃんとしておいてもらいたいなと思います。 |
上柳 | 今日は白川先生に伺って、無かったことにするとか、見て見ぬふりをするのが最悪で、とにかく、まずいなという兆候が出来たら、すぐに相談をした方が厄介なことにはならない、と… |
白川 | 役場も、その辺はよく心得ておりますから、十分、柔軟に対応してくれますから。 |
上柳 | なるほど。…と、いうことでございます。是非、参考にしていただきたいと思います。お時間でございます。白川勝彦弁護士でした。どうも、ありがとうございました。 |
白川 | 本年も、宜しくお願い致します。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第46回 | TOP[t] | 第48回