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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年2月21日 火曜日 (第53回)
テーマ
「利息制限法とはどういう法律なのか、具体的に教えてください」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日のこの時間は、ごごばんリスナーのあなたの法律の問題についてお話を伺う、「ごごばん! 法律クリニック」です。 スタジオには、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年の白川勝彦弁護士です。宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくどうぞ、お願い致します。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 二週にわたって、なぜ白川さんが債務整理の弁護士をやってらっしゃるのか、お話を伺ってまいりました。今日も、ご相談のメールを頂いておりますので、早速ですが…。匿名の、50歳の女性の方からの、このメールです。 |
増山 | 今 消費者金融など4社から、それぞれ50万円くらい、合計で170万円の借金があります。借金を始めたのは、ここ5年くらいのことで、ちょこちょこと手を出している間に、膨れあがってしまいました。そんななか、利息制限法というものがあり、実際には支払わなくてもよい借金の利息があるということを知ったのですが、具体的には、どういうことなんでしょうか? 私の場合も、適用される可能性はあるのでしょうか? |
上柳 | 170万円の借金ということですね。そして、利息制限法についてということです。宜しくお願いします。 |
白川 | 利息制限法というのが、今まで何度も出てきたんですが ─ ここで、改めてお話したいと思うんですが、この歴史は古いんですね。名前は違うんですけども、昔からやっぱり、高い金利を取る人はいたんでしょうね。明治10年には ─ 当時は法律じゃなくて、太政官令というので ─ 『もう、これ以上の金利は取ってはならない』と、いうものができているんですね。 |
上柳 | 法律があったということは、もっとすごい金利取っている人が、いっぱいいたってことですよね。 |
白川 | 現在のものは、その後出来たんですが、とくに、利率とかそういうものを含めて、昭和になってから出来た法律でして。 利息制限法でどういう風に制限しているかというと、原則は、契約自由の社会ですから、どういう風に決めてもいいんですが … しかし、最高限度はこれまでですよ、と制限しているわけですね。これは、10万円未満の場合は年20%。10万円以上100万円未満の場合は18%。100万を含めて、100万円以上の場合は、15%以上の金利を取ってはならない、と。法律上無効である、と。『金利は、無効だ』と、言っているんですね。 ですから、これに、それ以上の ─ 例えば、高い金利35%とか取った場合どうなるかというと、これはまた、別の法律になりまして。利息制限法という法律は、あくまで利息を制限している法律です。それに対して、もう一本大事な法律に、出資法という法律があります。正式には「出資の受け入れ、預かり金および金利等の取締に関する法律」というんですが、通常、出資法と言われています。 この出資法というのは、これ以上の金利を取ってはいけませんよ、と。契約することが、そもそも法律上罰せられるんです。法律で罰せられるということは、けしからんことですから、当然、契約自身も無効ということになるわけですね。利息制限法を仮に超えたとしても、それだけでは、契約自身が無効になるかというと、そうじゃありません。『金利が無効だ』と、言っているんです。ところが、出資法の定める範囲を超えると、今度は、契約そのものが刑法に反することですから。刑法でも罰せられる悪いことなんだから、契約そのものが無効ということになるわけですね。 その出資法の、利息と出資法に定めるのがどういう風に変わったかというと、ごく最近までは ─ すなわち、22年6月18日までは、29.2%以上の金利を取ると刑法上無効ですよ、と。刑法で罰しますよ、と。だから、契約それ以上が無効と言われたんですね。ところが、利息制限法は超えるけども、これ以下のものというのは、契約がゼロになるわけじゃないと。利息だけが無効だ、ということですね。利息が無効だというのは、どういう意味だと思います? 増山さん。 |
増山 | 利息は、払わなくていい? |
白川 | そうそう。無効ということは、法律上は存在しないということですから。利息制限法を超える利息は、法律上存在しないんだから、払う必要はないということですね。 しかし、払ったら結局どうなるかというと、そういった場合は、もし請求されるんだとしたら、利息制限法以上は払わなくていいんですが、払ってしまった場合は、どうかというと … これも、判例の編成がありまして、現在では、『利息制限法を超える金利は、元本に充当されますよ』と、いう風に決められております。法律上は決められていないんですが、事実上は確定した判例で、そうなっております。これを、通常過払い金と言うんですね。 ところが、出資法に反するやつは、金利だけでなくて、元金も無効ですから。 例えば、100万借りたとしても、それに反する ─ 例えば、50%の金利は、そもそも払う必要が無いわけです。もちろん、金利は当然無効ですね。この辺が、大きく違うんですね。 ところが、この人のように5年前くらいというと、平成22年6月に施工された法律は、これから先はそうですよと言っただけであって、それ以前のものが自動的にこうなりますよとは、何も書いてないんです。ところが以前、消費者金融などは、だいたい28%という金利を収めておりました。というと、その時だって利息制限法に違反しているから、無効なわけですね。だから、28%の金利を払っていれば、100万円以下だったら18%。しかし、業者は28%と、その10%分は過払い金なわけです。それは、当然元本に充当されます。 ですから、この貸金業法は、新しく変わった時点で ─ 現在は、殆ど主だった金融機関は、現実的には法定金利しか取っておりませんが ─ それ以前まで、全部引き直しているわけじゃないんです。だから、以前のやつは、彼らは『金利として頂きましたよ』と。だから、元金は全然減っていないんですね。その上で、これからは28%を18%にしますと言っているから、一見、過払いは出ないかと思いますけど、それ以前に払った10%近くの金利は、本来元金に充当されているわけですから、元金そのものが、法律上は減っているわけです。 減ったはずの元金に、業者は減らないと計算して18%を取っている。そうすると、結局取ってはならない金利を取っているということになりますから、今は法定金利でも、以前高い金利を払っていた場合は、減る可能性があるんですね。ですから、この人のご質問の場合、消費者金融などとありますので、中には、金融機関から借りたのもあるかもわかりません。そういうのがありますので、支払いがきついというような方の場合は、やっぱり、専門の弁護士からよく調査してもらいましょう。 |
上柳 | そうですね。いつ借りたのかってきっちり調べていけば、可能性ありますね … 相当ね。 |
白川 | 仮に、そうならないとしても、弁護士に頼めば、これからの金利はもう払わなくていいよとできます。長期分割というのも、大体応じてもらえますから。と、いうことで、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。 |
上柳 | と、いうことで、お時間でございます。白川勝彦弁護士でした。来週も、宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくどうぞ、お願い致します。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第52回 | TOP[t] | 第54回