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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年2月28日 火曜日 (第54回)
テーマ
「借金の保証人について、デメリットや問題を教えてください」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日のこの時間、ラジオの前のあなたの法律の問題についてお話を伺う、「ごごばん! 法律クリニック」です。スタジオには、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年の白川勝彦弁護士です。今日も、宜しくお願い致します。 |
白川 | こちらこそ、宜しくお願い致します。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | では早速、今日もご相談内容ですね。匿名の、53歳の男性からの、このメールです。 |
増山 | 会社を経営している私の知人から、先日、保証人になって欲しいとお願いされました。私が起業した時に大変お世話になった人なので、会社の建て直しに協力したいのはやまやまなんですが、保証人になることについては、正直迷っています。保証人になるということは、どういったデメリットや問題があるんでしょうか? 白川先生から、保証人について教えてください。 |
上柳 | テレビドラマなんかでもよく聞く、保証人という言葉。連帯保証人という言葉も、口について出てきますけど、違うんですか? |
白川 | 怖そうなんですけどね…。基本的には、法律家である私も知らないくらい、普通の保証人も連帯保証人も、差がありません。大事なのは、保証ということですね。 保証については、今まで何度か話したと思うんですけど…。弁護士になって、40年。色んな保証に関する相談に携わってきましたけど、今の世の中、なかなか全財産を失うということは、保証以外では、よほど大きな交通事故を起こしたとかぐらいしかないんですね。交通事故だって、保険に入っていればそっちで賄えますからね。だから、そういう悲劇をいっぱい見てきただけに、保証というのは、『ならないで済むなら、ならないに越したことはないですよ』ということを、いつも僕は申しあげているんですが。 ところが、これがなかなか、色んな事情があって、断りに断りきれない人から頼まれるもので … やっぱり、保証人になるケースが多いですが。 そういう関係を簡単に整理しますと、保証する場合は、3人が登場するわけですね。債権者・お金を貸す人、債務者・借りる人、そして、保証人が出てきて、3人との間で決めるわけですが。この債務者と保証人に色んな関係があるから、分かった上でも、これは保証しなくちゃいけないかなと。 ご質問の人は、自分が会社を立ち上げる時に大変お世話になったという、特別な関係がある。これがあるから、そういうことになるんですが。 |
上柳 | 情とか恩だとか絡んでくるとね。 |
白川 | ただ、法律的にはこの3人しかいないんですよ。そして、この債務者と保証人との関係がどんなものであったとしても、あるいは、どういうやりとりがあったとしても、基本的には関係のない話。3人の登場人物だけであって、しかも、保証だけ見ますと、債権者と保証人との契約なんですね。 どういう契約かというと、『債務者が払わない限り、債務を履行しなかった場合は、私が代わって払いますよ』と。保証債務といいます。保証債務という、債務を負う契約をするわけです。それが、保証契約ってやつですね。 さてそこで、色んなケースがありましたが、特に一番僕らが聞くのは、『絶対迷惑はかけないから、保証人になってくれ』と、言われたと。判子を押したんだけど、結局迷惑をかけることになった、と。『先生、これは大丈夫だろうか』と、言われるわけですが、債権者の場合は、債務者が返さなかった場合に代わりに返してもらう、そのために入れるんだから。絶対迷惑をかけないというのは、債務者がかけたくないという気持ちは分かっても、結局、債権者から見たら、返してもらえなければ保証人から返してもらう、と…。 |
上柳 | そちらで、どんなお話をされても、私にとって、保証人のあなたから返してもらうことになりました、となっちゃうわけですね。 |
白川 | そういう関係なんですね。あくまで、この3人の中で、債務者と保証人がどういうことであったかというのは、関係ないです。 ただ、まったく関係ないかというと、保証人が債務者に代わって払った場合は、払ったお金は、当然のことながら債務者に対して請求できますよね。代わりに払った場合は、『今度は、私に払って下さい』と。これを、法律的には求償権といいます。 それから、もうひとつ。債務者が元々持っている法律上の権利は、当然のことながら保証人も主張できます。例えば、あんまりいないと思うんですけども、債務者が払わなかったとかで、時効が成立した場合 ─ 例えば、5年くらい経って、後になっていきなり、保証人としての責任で払って下さいと言われても、債務者と債権者との関係の債務が、時効によって消えていれば、保証人は同じように時効で消えると。 それから、期限の利益という、債務者がきちんと払っていたら、分割で返せばいいということですね。ですから、債務者がまだ実際は遅れたりして期限の利益を承知してなかったら、期限の利益を持っているわけですから、保証人も一括して払えということは、必要ないわけです。 ただ、実際は、保証人の方に請求が来るときというのは、債務者が払わないから、普通は、期限の利益を失っていることが多いわけですね。 ただ、前に出てきた … 例えば、高い金利で違法金利がある場合とかいうのは、それも主張出来るかということなんですが、それは、別に債務者が持っている権利ではなく、元々違法金利という、法律上存在しないものですから。法律上存在しないんだから、元々保証人も払う必要が無いと。 |
上柳 | 誰にも適用されるわけですね。 |
白川 | 元々無いんですから。大雑把に言うと、保証というのはそういうことです。ただ、身元保証人 ─ 特に、子供さんが就職したり、あるいは親戚の誰かが保証することになったんで、できれば、伯父さんであるあなたに身元保証人になってくれ、と。これは、全然別でして、また来月にでも一度。 |
上柳 | お金のやりとり ─ 貸し借りとは違う法律になるんですね。 |
白川 | わざわざ身元保証に関する法律というのがあるくらいで、これはまた別なんですが。今日お話ししたのは、あくまでも金銭の貸借にかかわる保証人ということですね。 |
上柳 | 例えば、途中で保証人を辞めたいんだ、と。辞めさせてもらいたい … これは出来るんですか? |
白川 | 基本的には、債権者がイエスと言わない限りできません。あくまでも、当事者が… 債権者と保証人との関係ですから。債権者が『いいですよ、残債も少なくなっているから、もういいですよ』となれば、可能です。 |
上柳 | お金を借りている方にいくら言ったって、関係ないわけですね。貸してる方に言わなくちゃいけないんですね。 |
白川 | 債権者と保証人との契約ですから。他に、何かありますか? |
上柳 | あと、保証人になって返すことになっちゃったんだけども、それでも返済しきれない場合って出てきますよね。どうするんですか? |
白川 | それは、いつも話している通り、債務者が債務を返済できなかった場合、民事再生とか破産というのがあるように。まだ遅滞が起きてなくても、あらかじめそういう恐れがある場合なんかは、保証債務そのものを ─ 例えば、一千万の保証人になっていて、将来一千万返さなくちゃいけないかもしれないけど、私はもう返す自信がないから、あらかじめ、民事再生で5分の1にしてもらったりする、ということもあるんですよ。 |
上柳 | なるほどね。簡単に判子ついて保証人になっちゃいかんというのは、お話を聞くたびに思いますね。 |
白川 | ただ、そこにモヤモヤとした深い関係があるから。 |
上柳 | 情と恩というのがあるから。『頼むよ、あのとき助けたじゃないか』『そうですか、絶対迷惑かけないでくださいよ』…ポンっと、そのポンで、お金を貸した側との契約になってしまうと。 |
白川 | そういうことですね。 |
上柳 | これは、忘れないようにということでございます。お時間になりました。白川勝彦弁護士でした。どうもありがとうございました。 |
白川 | どうも失礼しました。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第53回 | TOP[t] | 第55回