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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年3月6日 火曜日 (第55回)
テーマ
「債務整理されてしまうと、その保証人にはどのような影響があるのでしょうか?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日のこの時間は、ラジオの前のあなたの法律の問題についてお話を伺う、「ごごばん!法律クリニック」です。 スタジオにはお馴染み、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年の白川勝彦弁護士です。今週も宜しくお願い致します。 |
白川 | 宜しくどうぞお願い致します。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | では早速、今日の相談内容、ご紹介しましょう。匿名の、52歳の男性からのメールです。 |
増山 | 私が保証人になっている方が、工場の経営に行き詰まりつつあり、債務整理を考えているという話を聞きました。債務整理をされてしまうと、私にも影響があるのではと思い、今は「ちょっと待って欲しい」と止めている状態なんですが、このまま彼に頑張ってもらった方がいいのか、債務整理を勧めた方がいいのか、困っています。保証人である私には、どのような影響があるのでしょうか? 任意整理・個人再生・自己破産…どのケースなら影響はないのでしょうか? |
上柳 | 保証人になっていると、相手が債務整理するかしない、か … こっちの人生にかかってきますからね。 |
白川 | 特に、工場ですからね。保証額も、100万とか200万じゃないと思うんですよね。このところ、保証人に関する話題が続いたんですけど、良い機会ですから、保証債務とは何か ─ あるいは、債務整理とは何かをお話するいい機会だと思いますので、始めます。 では、ここでおさらいをしておきたいと思うんです。債権者がいて、主たる債務者がいて、保証人がいる、と … こういう関係ですね。工場をやっている保証人ということですから、主たる債務者が借りているお金は…1500万円としましょうかね。それに対して、私が保証した、と。主たる保証人が債務整理したとしても、基本的には関係ないと、よく言いましたよね。色々あるけども、基本的に関係ないと。あくまでも、保証契約というのは、債権者と保証人との関係なんだから。 |
上柳 | お金を貸している方と保証人の関係に変わっていくだけ… |
白川 | それは、基本的に変わらないんですよね、この場合も。ただ、その前に、債務整理というのはどういうのがありましたっけ? そもそも。 |
上柳 | 任意でやったりとか、民事再生というのがあったりとか。最終的には、自己破産ですか。 |
白川 | 債務整理をする3つの方法と言われていますが、ただ、あくまでも保証人が払わなくちゃならないのは、主たる債務者が負っている債務そのものですよね。それ以上ということはないわけで。それを返す保証をしているのが、保証契約ですからね。だから、債務そのものがなくなったり、場合によったら減額できる場合は、どういう場合がありましたかね。 |
上柳 | 裁判所が認めてくれたりとかでしたっけ? |
白川 | 例えば、1500万の借金をしていたとしても、それが無くなったりする一番単純なの、なんでしょうか? |
上柳 | 債務者の財産を整理して返した場合… |
白川 | 要するに、元の債務が無くなってしまえば、当然保証人の責任も無くなりますね。中には、主たる債権者との取引が5年間何もなかったりした場合は、時効によっても、債務そのものを消滅させることもできます。 |
上柳 | 5年間返してないんだから時効で、もう後は返さなくていい、と。 |
白川 | それは、債務が減るわけですね。そもそもが無くなったから、当然保証人も返す必要はない。例えば、今、1500万請求されているけど、違法金利がある。弁護士が、これは実際上は500万返せばいいじゃないかと言った場合は、これは別に、弁済して減ったわけじゃないけど、違法な金利で債権者がたまたま請求しているだけだから。そもそも、債権者は1500万と言っているけど、法律上は500万しかないということだから、これは当然、保証人も言えるわけですね。 |
上柳 | 過払い金というのは、保証人にも適用するわけですね。 |
白川 | 当然のことながら、そもそもないんだから。主たる債務者が、そもそも追っていないんだから、保証人も負う必要がない。 さて、ここで、主たる債務者が債務整理をした、と。よく、自己破産したというのが、一番多いですかね。自己破産というのは、債務を返さなくていいということですよね。 そこで、前にも一度話したことがあるような気がするんですが、破産をしたからといって『チャラになった』とよく言われますけど、法律上の債務がゼロになったという意味じゃないんですね。ちょっとここが難しいんですがね、一般の方には。法律上の支払いを法律上免除されるということですから、仮に1500万円あったとしても、その債務者本人は、法律上請求されることはない。裁判で訴えられて、無理やり払わされるようなことはない。だから、債務そのものがゼロにするというのが自己破産じゃないんですね。支払いを免除してあげる、と。 |
上柳 | 返さなくてもよくしてあげるだけで、借金としては残っているわけですね。 |
白川 | 借金としては、残ってます。ただ、法律上の支払いを免除してもらうと。 |
上柳 | 裁判所が、この人はもう無理なんだからいいよと言っただけで、借金自体は残っていると。 |
白川 | そうですね。だから、それはあくまでも、破産を申し立てた主たる債務者はそうだよということです。 |
上柳 | 債務者の方は免除されたけど、保証人の方まで免除されたわけじゃないと。 |
白川 | 債務そのものが減っているわけではないですからね。 |
上柳 | 自己破産の場合は。 |
白川 | 民事再生の場合は、3000万以上〜5000万未満は10分の1にしてもらえるわけですね。 |
上柳 | 裁判所が『10分の1くらいなら、払えるでしょう』と。 |
白川 | 3000万円以下は、5分の1なんですけど。それも、5分の1にはしてあげるけど、それをちゃんと払えば、他は法律上免除されるということであって ── 例えば、1500万の借金が500万になったわけじゃないです。 |
上柳 | 丸々、残っていることは残っている。さぁ、その時に、保証人のあなたです! となっちゃうわけですね。 |
白川 | そういうことですね。ですから、主たる債務者はそうだか知らないけど、保証人はそうはいきませんよと。 ただし、この人の場合 … 例えば、この方がサラリーマンだとしましょうか。1500万を払えと言ったって、簡単には払えませんよね。その場合は、今度は1500万円を払えという保証債務 ─ この人だって、自己破産とか民事再生とか申し立てたら、そもそもの1500万円の借金が返せないから、困難だから、裁判所さん何とかして下さいよということで申し立てて、裁判官が判断してそうするわけですから。ですから、保証人についても同じこと。約束はしたけども、実際問題1500万払うのは困難です、とてもできませんという場合は、保証人も保証債務について民事再生、もしくは破産を申し立てればいいわけです。 |
上柳 | 別途、裁判をしなきゃいけないんですね。 |
白川 | 裁判をするというより、申し立てですね。 |
上柳 | でも、この債務者とは別に、ちゃんと申し立てを自分でしなくちゃいけない。 |
白川 | 債務者がしたからといって、自動的にその恩恵に預かれるというわけじゃないことなんですね。任意整理の場合は、ゼロにしたりするわけじゃないですから、通常は和解ですから、その場合は、保証人の事も含めて一緒に協議しますので。 |
上柳 | 逆に言うと、民事再生とか自己破産をする権利はちゃんとあるということですね。 |
白川 | 保証人にもあるということですね。おわかり頂けたでしょうか? |
上柳 | 工場の経営の保証人になった、普通のサラリーマンの方だとね。 |
白川 | 額が大きいですからね。 |
上柳 | 毎週同じようなことになりますが、軽々に判子というのは、どんなに親しくてもね … ってことになるんですがね。なかなか、それが人情とか情とか、恩の世界とか、あるんでしょうね。 と、いうことでございました。今日はまた、保証人のお話になりました。最近多いんでございますが … お時間でございます。白川勝彦弁護士でした。どうもありがとうございました。 |
白川 | どうも失礼しました。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第54回 | TOP[t] | 第56回