HOME > 白川文庫 [l] > カツヒコ・アラカルトTOP[f] > ごごばん! デイリースペシャル > 2012年4月24日 (第61回)
ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年4月24日 火曜日 (第61回)
テーマ
「夫が体調を崩し働けない為、借金が返せません。どのような解決方法がありますか?」
話者名 | 話の内容 |
---|---|
上柳 | 毎週火曜日この時間は、「ごごばん!法律クリニック」です。ラジオの前の、あなたの法律の問題についてお話を伺います。スタジオには、お馴染み、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年の白川勝彦弁護士です。今週も、宜しくお願い致します。 |
白川 | どうぞ、宜しくお願い致します。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
---|---|
上柳 | では早速、今日もご紹介いたしましょう。相談内容です。匿名希望の39歳の男性からの、このメールです。 |
増山 | 私は、契約社員として仕事をしていましたが、2年前に体調を崩したことで出勤日数も減り、さらに、会社の業務悪化などもあって、突然の解雇の通知を仕方なく了承しました。その後も就職活動を行いましたが、通院もあってうまくいかず、徐々に医療費や生活費がかさみ、借金をするようになりました。現在の借金は、500万円。入院の可能性もあるので、もう返せないと思い、今、債務整理を考えています。今後も安定した収入を得ることは難しいと思うので、債務整理でも、自己破産を選んだほうが良いのでしょうか? |
上柳 | ご本人は働く意思はあるのに、体がどうにもならず、そして、こうなってしまったって …… これは、本当に可哀そうですよね。 |
白川 | そうですね、なかなか深刻です。同じような生活苦・借金苦と、私は、毎日のようにお付き合いして、どうしたらいいか、依頼者のみなさんと考えながらやっている…のが、私の仕事です。 |
上柳 | なんとか、この絶望的な状況の中に、一筋の光が見つかるといいんですけど …… どうなんですかね。 |
白川 | この方の場合は、ある面では、現在の借金が500万 ─ その500万円をどうするかというのは、我々なんとかなるんだけども、毎月10万でも20万でも、借金が増えているとすれば、借金自身を私どもがなんとかするというのは、弁護士の力ではないもので …… 本当に、深刻なケースがありますね。たぶん、この方の場合も、これから増えないということなら簡単なんですが、現在でも増えていると…… |
上柳 | 医療費・生活費ですからね … 削れないものですよね。どのようなアドバイスがありますか? |
白川 | この方の場合、500万といいますと、どういう借り方か分かりませんが、毎月相当の金利が上乗せしますね。新たに借りなくても、金利そのものは増えていきますから、まず、それは何とかしなきゃいけないんですが。 それよりも、医療費だとか生活費が収入を超えていたりした場合は、率直に申しまして、まずそれを止めなければいけないですよね。と、いうのは、収入が無い、それ以上にかかるという場合は、そういう時のために、生活保護制度というのがあるわけですから。 |
上柳 | 国の支援というものですね。 |
白川 | そういうことですね。ただ、生活保護も、いま非常に厳しくなっているんですよ。特に、債務のある方の場合の生活費というのは、生活保護費の原資 … 元は税金ですよね ─ それで、その生活費がなければ本当に生活が困ってしまうというなら別だけど、生活保護費として渡したものがその人の借金に消えていったりすることを、生活保護を出す市町村役場は、非常に嫌います。 |
上柳 | 借金の返済には使われたくない、と… |
白川 | 基本的には、生活保護の精神とは違うわけですから。 生活保護をもらえたとしても、色んな事を聞かれるわけですが、そうすると、債務の状況はどうなんですかということも、かなり聞かれます。そして、もし生活保護費を払ったとしても、それが債務整理に使われたりしちゃうと、生活保護の本来の趣旨に反するものですから、結構、こういう方の場合は支障になりますね。 |
上柳 | 最後のセーフティーネットから落っこちてしまうという …… それは大変ですよね。 |
白川 | そうなんですね。だから、貰えないというんじゃなくて、その生活保護が本当に債務に消えていかないという保証が欲しいわけですね。 ですから、場合によったら、生活保護は、あなたの場合はそういうような条件がある、と。 ただ、ある面では、『その債務をきちんと整理したらどうですか』というようなことは、言われたりするんじゃないでしょうか … 生活保護申請の時点で。 |
上柳 | その整理がなされて借金が無くなれば、生活保護ができます ── とはいえ、返すお金もないわけですしね。 |
白川 | 債務整理をすることが条件とは、言いませんよ。ただ、生活保護を出す方としてみたら、生活保護が債務の整理になったら、生活保護の本来の制度とは大きく違うものになります。そこは、そうならないように、『もし、債務整理をする必要があるならば、弁護士さんなり法テラスに行ってやってみたらどうですか』ということは、結構言われるみたいですね。そう言われるのも、無理が無いような気がします。 |
上柳 | そうすると、かなり困った状況で白川先生の所に相談に行く、と… |
白川 | 現実に生活が出来ないなら、それはそれとして、生活保護を市町村役場の方に申請したらどうですかということも、率直に申し上げます。 ただし、さっき言った通り、仮に返さなかったとしても、金利は毎月増えていくわけですから。だから、債務整理はどっかでしなきゃいけませんよねというようなことは、いずれにしてもやります。 この方の場合、500万ですから …… 39歳で元々契約社員だったわけですよね。それが解雇になった、と。そうすると、なかなか良い所に勤めるのは難しいですよね。そうなりますと、500万の借金を返すというのは大変ですから、普通は、自己破産という方向に行かざるを得ないのかな、と。 と、いうのは、それ以外に良い方法はあるんですね。個人再生という、500万の借金をおおむね約5分の1にしてくれるという ─ そういう、債務者にとって良い制度が、あることはあるんです。が、その場合は、安定した収入があるのが、個人再生をする場合の条件です。それが無いわけですから、この方の場合、病気が治って、今後は少なくとも安定した収入はありますよ、と。それで、裁判所が言う範囲で、かなりまけてくれますから、それだけは払えますよという、ちゃんとした保証が無いと、なかなか、個人再生という制度の適用を受けられないものです。 ですから、自己破産の方向も、やむを得ないのかなという感じもします。 |
上柳 | なかなか厳しいですね。そこから新たに生活を立て直して、体を治して、次なるステップへということですかね。 |
白川 | そうですね。 |
上柳 | しかし、借金の返済中に入院が必要になってしまうと、返済が消えないわけですから。本当に、こういう悩みの方、多いでしょうね。 |
白川 | そうですね。借金返済している。ところが、入院してるから、とにかく、月々のものを返せなくなるという … そういうケースも、いっぱいあります。ただ、今はある面では、金融業者というのは ─ 今まできちんと払ってくれた、と。しかし、ちょっとこういう事情で1〜2ヶ月払えないという入院だとか、例えば、こういうことで払えないんだという理由をちゃんと正直に言えば、今の金融業者はかなりよく聞いて、それが本当だとしたならば、かなり柔軟に解決してくれます。 |
上柳 | なかなか、今日は深刻なお話でした。お時間でございます。白川勝彦弁護士、どうもありがとうございました。 |
白川 | ありがとうございました。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第60回 | TOP[t] | 第62回