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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年5月1日 火曜日 (第62回)
テーマ
「マイナス財産の遺産相続はどう対応したら良いですか?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日この時間は、「ごごばん!法律クリニック」。ラジオの前の、あなたの法律の問題についてお話を伺います。スタジオにはお馴染み、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年の、白川勝彦弁護士です。今週も、宜しくお願い致します。 |
白川 | どうぞ、宜しくお願い致します。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | それでは、今日もご相談内容をご紹介いたしましょう。チエコさん、63歳の女性から頂いた、このメールです。 |
増山 | 先日、夫が65歳で亡くなりました。夫には、生前、自営業で蓄えた遺産が1000万円あるのですが、その一方で、自営業で必要となる資金を、自宅を担保に銀行から5000万円借りていて、まだ、返済額が3500万円も残っていることが判明しました。パートの私も、まだ学生の二人の息子も、このようなマイナスの遺産があることを全く知りませんでしたので、困っています。夫からの相続は、どのように対応すればいいでしょうか。 |
上柳 | ご主人が亡くなられただけでも、本当に相当なショックを受けてらっしゃるわけですけども、そこにまた、お金の問題が発生してしまって、本当に大変だと思うんですけど…。 相続なんですが、お金が入ってくるということじゃなくて、借金というのも相続ということになるんですか、概念的には。 |
白川 | そうですね。財産にはプラスの財産もありますが、マイナスの財産もありますからね。遺産相続とは、プラスの財産もマイナスの財産も相続するということですから。 |
上柳 | 全然知らなくて、ご主人が亡くなって本当に悲しんでらっしゃる時にこういうことが分かると、大変な状況だと思うんですが、是非アドバイスお願いします。 |
白川 | 2つ分からないんですが。生前に蓄えた遺産が1000万円。預金とか株であるという意味なのか、それとも、自宅を担保に5000万借りて、3500万の残がある……と、自宅が0みたいな感じなんですが、5000万の担保として入れたのは、それなりの財産だと思うんですね。だから、自宅の価値が、例えば3500万まではないけども、3000万位あるとしたならば、実際上は、担保を除いた分だけはマイナスですから。その場合だったら、自宅以外の財産が1000万円あって、自宅の価値が3000万あるとしたならば4000万で、借金が3500万円ですから、プラス500万ですね。その遺産の1000万の中に自宅が入っていれば、2500万円の借金で。ちょっと、そこが分からないので。 ただ、どちらの場合も、良い質問なのでお答えしようと思いますが。まず、最初からマイナスだと分かっていたら、相続放棄という方法があります。 |
上柳 | マイナスの方の遺産も、放棄できるんですか? |
白川 | マイナスもプラスも、相続を放棄しますと、相続人から抜けるわけです。この方の場合マイナスだというから、自分も抜けるし、子供達もまだ学生だからというならば、みんなが相続放棄したとしましょう。そうすると、この遺産は誰のものになると思います? |
上柳 | 借金返済に充てられて、その残っている分は、国庫に入るみたいな? |
白川 | この二人が、相続人でなくなりますから。 |
上柳 | それ以外でも、相続する権利がある方がいらっしゃったら… |
白川 | 相続放棄すると、その人たちは相続人でなくなる。そうすると、この方の場合ご主人さんがいて、たぶん65歳というから、次はお父様お母様が相続人になるんですよね。たぶん、お父様お母様は亡くなっておられる…とすると、ご主人さんのご兄弟が相続人になるわけですね。 |
上柳 | それは、マイナスの相続でも、いってしまうわけですか。 |
白川 | だから、ご兄弟も『マイナスはいらない』と言うと、その相続を知った時から、この方々も『相続放棄します』と、いうことになりますよね。 ここで、相続人がいないということで、いずれは、何らかの形で国庫に行くというような形になります。 相続放棄するということは、相続人でなくなるというだけですから、他の相続人が浮かび上がってくるわけですね。 さて、そこで … 相続放棄というのは、亡くなってから3ヶ月以内に、家庭裁判所で申述をして、はじめて有効なものですから。この方の場合、亡くなったその日から知っていると思うんですが、相続を知った日から3ヶ月以内なんです。さっき言った通り、この方が遺産相続して、おじいちゃんおばあちゃんは亡くなっているから、兄弟が相続人になった場合、この方々は、相続したか知らない場合がありますよね。そういう場合は、自分が相続放棄して初めて、この人たちが相続人になるわけですから。相続放棄したことを知ってから、またそれぞれ3ヶ月以内に家庭裁判所に、『私も、借金だけなら相続放棄しますよ』と。相続を知ってから3ヶ月以内というのが、大事なことですね。それが相続放棄です。 ただ、さっき言った通り、前のケースの場合、財産が1000万で自宅の価値が3000万ある、と。それで、借金が3500万あるとすると、プラス500万くらいですよね。500万だって、貴重ですから。もし、こういう風に、財産と負債の関係が本当のところ分からない、と。だったら、財産の範囲だけで相続しますよと。それ以上多くなっても、相続しませんからというのを、限定承認と言います。これも、やはり同じく3ヶ月以内に、相続人全員で家庭裁判所に行って、限定承認をしますと。これは、相続が始まるわけですから、さっきみたいに別の人にはいきません。相続はするけども、亡くなった方の財産の範囲内でという意味ですから。これは、相続人全員でやる必要があります。 |
上柳 | なかなか、借金の相続だけを放棄して、残っている遺産は相続するわけにはいかないんですね。 |
白川 | 世の中、そうはうまくはいきませんよね。 |
上柳 | 色々、細かく決まっているものですね。 |
白川 | 相続を放棄した場合、どういうことかと言いますと、なかなか人の財産というのは、意外に分かるようで分からないものなんです。例えば、株券なんかがあったとすると、場合によったら、分からないことがありますよね。それが、場合によったらバンと増えたりしますが。いったん相続は放棄したと、しかし、後で実はもっと財産が多いから相続放棄を取り消してくれといっても、これは、いったん家庭裁判所で裁判官がちゃんと聞くんですから。これは、そうはいきません。 |
上柳 | そう簡単には、取り消しにはならない。 |
白川 | ですから、相続放棄をする前に、財産とか出来るだけ調べて、慎重にやった方がいいと思いますね。 |
上柳 | ご主人が亡くなられて、すぐにそういう事務的なことをテキパキやるのは、本当に大変かと思いますが、3ヶ月、あっという間だと思いますけど、ここはきちっとおやりになった方がいいですね。 |
白川 | そう思います。 |
上柳 | こういう相談も、弁護士さんは受けて頂けるということでございます。お時間になりました。白川勝彦弁護士でした。また来週宜しくお願いします。 |
白川 | こちらこそ、宜しくお願い致します。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第61回 | TOP[t] | 第63回