HOME > 白川文庫 [l] > カツヒコ・アラカルトTOP[f] > ごごばん! デイリースペシャル > 2012年6月19日 (第69回)
ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年6月19日 火曜日 (第69回)
テーマ
「ヤミ金と一般の金融業者の違いについて、教えて下さい」
話者名 | 話の内容 |
---|---|
上柳 | 毎週火曜日この時間は、「ごごばん! 法律クリニック」です。ラジオの前の、あなたの法律の問題について、お話を伺います。スタジオには、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年、お馴染み白川勝彦弁護士です。今日も、宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくどうぞ、お願い致します。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
---|---|
上柳 | では早速、ご相談内容です。ヒロミさん、40歳の女性から頂いた、このメールです。 |
増山 | 以前から番組でも少し話が出ていますが、いわゆるヤミ金業者とは、どういう業者なんでしょうか? 他の金融業者とは、どう違うのでしょうか? また、ヤミ金業者は、どのような方法でお金を貸すのですか? 分からないので、教えてください |
上柳 | 改めて…という方もいらっしゃるかもしれませんけど。一時、ヤミ金というのは話題になりましたけど、今、現状としてはどうなのか。そして、改めて、ご説明を宜しくお願いします。 |
白川 | ヤミ金業者 ── 業者というのは、一応業者ですから … ヤミ金と言った方が、いいと思いますね。大体、得体が知れないんですよ。 |
上柳 | やはり、違法、あるいはアンダーグラウンドな世界… |
白川 | 業者というのは、それなりに存在があるということじゃないですか。それすらない、という存在なんですね。 まず、根本から押さえますが、貸金業を営むためには ─ 規模によって違いますけど、国、または都道府県に、登録をしなくちゃなりません。貸金業者には、貸金業法が定める、守らなければならないこと … 『こういうのに違反したら、刑罰で罰せられますよ』、あるいは、行政処分で『場合によったら、貸金業者の登録を取り消しますよ』と、いうようなことがあります。 したがって、タチの悪い金融業者もいますけど、一応、登録をちゃんとしている。しなければ、貸金業そのものをやっちゃいけないんです。この登録をしていない業者というか、そういうことをするものを、通称、ヤミ金と言うんですね。 |
上柳 | 法律に縛られないんですから、悪いことをしようと思っても、なんでも出来ちゃうんですね。 |
白川 | ですから、普通の金融業者とヤミ金の違いはなんですか、と。所詮、ヤミ金というのは俗称ですから、学問的な定義があるわけじゃないんですが、私風に言わせれば、法律の枠内にいるか、それとも法律なんかくそくらえと、そんなもの知ったもんかと。だから、文字通り法律という枠があって、アウトローですから、枠の外にいる存在ですね。それが、ヤミ金だと、私は思います。 色々、タチは悪いけど枠内に収まっている業者は、ヤミ金とは言わないんですね。色々問題があったり、かなり強引なことをするけども、そういう人たちはそれでも、まだ登録を取り消されたりすることは恐れてますから。 例えば、僕ら弁護士が言えば、貸金業法に定まったり、法律の中で色々手続きは進みますけど、もともとアウトローですから …… 弁護士も、法律を武器にして戦う人間ですからね。だから、法律を使えれば色々話し合いとか出来るんですけど、法律なんてくそくらえという連中ですから、我々弁護士が出ていっても、なかなか簡単には解決しない、と。 しかし、まだ法律の枠内にいる業者は、かなり問題がある業者でも、一応、我々弁護士として手が打てるんですけども。そういう面では、ヤミ金というのは、本当にアウトローの存在ですね。 ところで、増山さんは『トイチ』という言葉は知っていますか? 上柳さんは知っていますよね? … 10日で一割というんです。例えば、急に葬式があったと。郷里に行くのに、10万円くらい要りますよね。当然、今は無いから、『10万円、貸してくれ』と。10日後に、ちゃんと一万円付けて返す。10日で一割だって、それ自体は、本当に困った時ならば、一万円で貸してくれるなら助かることはあるんですよね。ところが、それが続くと、年間いくら金利払わなくちゃいけないと思いますか? |
上柳 | これは、相当になるんでしょうね。 |
白川 | 単純に言えば、トイチだから、一年で言うと36.5割ですね。ということは、元金の約4倍近くの金利を払いなさいと。これが、トイチということです。ところが、結構これに引っ掛かる人がいるんですよね。 |
上柳 | 藁をもつかむ、という感じなんですか? 他に貸してくれる人がいないから、トイチでひどい金利だけど、しょうがないということなんですか。 |
白川 | あんまり、ひどい金利という自覚が無いんじゃないでしょうか。10日で一割なら、そのくらいの価値があることもあるんですね。 先ほども申しましたが、ヤミ金業者というのは、存在自体がアウトローですね。アウトローの世界にいる人間ですから ─ 法律の枠外にいる人間ですから、やることなすことも全部、法律外の事が殆どなんですね。だから、トイチで貸しますなんてことは、まさにそういうことであって……まず、その行為そのものが、出資法で定められていることに違反しますから、刑罰の対象です。 仮に、10万円を現実に貸したとしても、現実に10万円が動いたとしても、その行為そのものは、民事的には無効です。無効ということは、どういうことだと思いますか? 無いんです。法律上無いということです。だけども、金利とかは別として、動いたんだからなんとかしてくれよと言いたいような感じはするでしょ。しかし、法律上は無いんだから、金利はもちろん、元金も返してもらえないんです。返してもらえないんだから、彼らとしては、法律上裁判で訴えることが出来ないんです。だから、裁判で訴えられないんだから、裁判以外の方法で、ありとあらゆることをやるわけですね。だから、家族に言うよとか、家族から払ってもらうよとか、あるいは、会社に行くぞというようなことをやったり、あるいは、どうなるか分かってるかと脅すようなことを言ったりして。僕ら弁護士が出ても、『弁護士なんて、怖くないよ。法律内でやってないよ』と、なっちゃうわけですね。 最後ですが、ヤミ金を見分ける方法というのは、端的にいえば、広告のサイトとか、あるいは契約書なんて結びませんけど、そこにちゃんと貸金業者の登録をしてあるかどうか。番号が書いてあるから、そういうところが、一番のポイントだと思います。 それから、090の人間は相手にしない方がいいですね。固定電話なら、結局バレますから。彼らは、刑罰で罰せられるのが一番困りますから、だから、自分がバレないようにするわけです。 |
上柳 | 居場所が分かるようなことは残さない、と… |
白川 | そういうのが無いのは、注意した方がいいですね。 |
上柳 | なるほどね。 色んなお話を聞いて、法律の外にいる人たちの話である、ということですね。これを、肝に銘じましょう。 ── と、いうことでお時間でございます。白川勝彦弁護士でした。どうも、ありがとうございました。 |
白川 | どうも失礼しました。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第68回 | TOP[t] | 第70回