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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年6月12日 火曜日 (第68回)
テーマ
「養老施設への入所にあたり、財産の管理を誰に任せたら良いか、困っています」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日この時間は、「ごごばん!法律クリニック」です。ラジオの前の、あなたの法律の問題についてお話を伺います。スタジオには、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年、お馴染み白川勝彦弁護士です。今週も、宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくどうぞ、お願い致します。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | それでは早速、今日も相談内容に参りましょう。匿名希望、73歳の女性から頂いたメールです。 |
増山 | 私は、5年前に夫に先立たれ、一人暮らしをしています。子供はおらず、一人だけいる妹も福岡在住なので、殆ど接触がありません。少し寂しかったり、健康的な問題もあり、近々養老施設に入所しようと思っているのですが、財産の管理などを誰に任せればいいのか、困っています。妹は離れているので任せづらく、こういう場合、どうすればいいでしょうか? |
上柳 | これから、この日本では、こういう相談がますます増えていきそうな感じがしますね。高齢者の方の財産の管理 … これは、先延ばしにして考えたくないという方も多いと思うんですけど、考えなきゃいけない問題なんですかね。 |
白川 | 実は、私の家内なんかも、兄弟もいませんからね。こういう問題があるんじゃないかな、と思いますが。 ただ、問題になるほどの財産があるかどうか分かりませんから。これは、妹さんが離れているから任せづらくというので、不動産など持っておられるんじゃないかなと思うんですよね。例えば、全部現金だけであれば、疎遠だったとしても、『養老施設の費用がいくらだから、いくらずつ振り込んでくれ』というのは、妹さんなら頼めると思うんですよね。ですから、誰に任せればいいのか困ってますということですが、結局、ある財産を人に任せるというのは、信頼できる人に任せるしかないですよね。 ところが、どんなに信頼できる人でも ─ 例えば、この方が病気になったり痴呆症になったりすると ─ いくら信頼できる人でも、任せられているんだということで、何かおかしなことをするかもわかりませんよね。なんとか、ダブルチェックをしたいということなんですよね。 結論から申しますと、あるようだけどないんですよね、実際は。 もし、自分が亡くなった時に、自分が財産を持っていたらどうして欲しいというのは、遺言しかないですね。遺言で、ああして欲しい、こうして欲しい。それは、自分がもし死んだ時、自分の財産がどれだけあったかというのを、こう処分して欲しいというのは、遺言ですよね。 たぶん、その間なんだと思うんですよ。この方も、近々養老施設に入られる、と。養老施設に入ると、色んなタイプがあるようですが、入ったお金を一括で払えばいいというような所もあるようですが、月々いくらというような所もありますよね。月々いくら払ってくれというのは、どういう風にして払うんだ、と。同時に、今は健康なようですけど、例えば、自分が判断能力が無くなった場合はどうしたらいいか … その辺を考えられるんじゃないですかね。 亡くなった時は、遺言でちゃんと決めておけばいいわけですからね。いま財産がある、と。誰かに任せても、自分がチェックできるのであれば、実務はやってもらっても、『それ、ダメよ』とか言えばいいだけの話ですよね。 ですから、自分の財産をこういう風に管理して欲しいというのは、普通ならば任せればいいわけですよね。 ただし、任せてしまったら、自分の元気なうちは目が届くけども、目が届かなくなったらどうすればいいのか、と。信託というのもあることはあるんですが … 『自分の財産を運用してください』と。『自分のために、これだけ振り込んで下さい』と。そういうのも決められるんですけども、あくまでも、『今ある財産を、どういう風にして増やすか』と、『利益が出たら、誰に渡すか』という話で、最終的にどう処分してくれと決めるんじゃない。今ある財産を、どういう風にして使ってくれという話ですからね。 なので、この方に一番向いているのが …「任意後見契約制度」というのがあるんです。要するに、成年後見制度。自分の事理分別能力が無くなったら、裁判所が関与して、その方の財産を守るためにどうかというのは、法律上きちんと決まっていますよね。そうではなくて、これは、もし自分がそういう風になったら、あらかじめこの人に後見をお願いしたいと。同時に、任せると言ったって、誰かが管理してくれなきゃいけませんから。ですから、後見監督人というのがちゃんと選ばれて、かなり細かく書いてある法律があるんです ─ 任意後見契約に関する法律というんですが。ただ、まだそんなに多くの方は、利用されていませんよね。 |
上柳 | 全然知らなかったですね … そういうのがあるんですね。 |
白川 | さっき言った通り、財産があると、信頼ある人に任せればいい、と。しかし、信頼する人だって裏切る場合もありますからね。ですから、誰かに管理してもらうという … 正直言って、私もよく分からないんです、この問題は。 ただ、結論からいいましたら、任意後見契約に関する法律というのに基づいて色々やるのが、この方が心配されているのに一番向くんじゃないかな、と私は思いますけど。いずれにしろ、これらの手続きは、信頼できる弁護士にきちんと頼むのが一番いいと思います。 ただ、正直言って、今日の話は分かりやすいようで分かりにくいかもしれませんが … まだ、はっきりとした制度があることはあるんですが、ちゃんと信頼にこたえて任せる人がいるかどうか … そういう人も、今、少ないんですよね、残念ながら。 たぶん、こういう問題はいっぱい出てくるんじゃないかなと思いますし、たぶん、こういう所の法律も変わってくるんじゃないかと思います。 |
上柳 | これからどんどん出てくると思うんで、ちゃんと整備をしないと、現実に法律が合わなくなってきてる可能性がありますね。そういう現実があるんですか… |
白川 | ですから、成年後見人制度というのは、自分が訳が分からなくなってから、人が決めることなんですよね。私が痴呆症になったりしたら、この方にこうして欲しいと、あらかじめ定めておけるんですね。 ただし、いくら信頼する人でも、裏切る場合があるから、その場合は、その方を監督する、任意整理監督人後見人というのもありますからね。それは、裁判所が決めますので。こういうのが、一番向いているんだけども、あまり使われていないような感じがしますね。 |
上柳 | 法律の整備が、早急に求められる分野ではないかと思います。お時間でございます。白川弁護士でした。どうもありがとうございました。 |
白川 | ありがとうございました。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第67回 | TOP[t] | 第69回