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白川勝彦の 前向きライフ 2013年2月10日 日曜日 (第3回)
話者名 | 話の内容 |
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白川 | みなさん、こんばんは。白川勝彦法律事務所・所長、弁護士の白川勝彦です。 |
増山 | こんばんは、ニッポン放送の増山さやかです。
お休みの夜、いかがお過ごしでしょうか。 「白川勝彦の前向きライフ」─ この番組は、白川勝彦法律事務所・所長で、弁護士歴41年の、白川勝彦さんと一緒に過ごす60分です。様々な苦難を前向きに乗り越えてきた、白川さんの経験談から、人生を前向きに過ごすヒントについて、考えていきたいと思います。 白川さん、改めて、どうぞ宜しくお願い致します。 |
白川 | こちらこそ、宜しくお願い致します。 |
話者名 | 話の内容 |
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増山 | 前回は、去年12月に放送をさせていただきましたが、白川さんへの質問のメールなど寄せられていますので、少しご紹介させていただきます。 足立区の50歳の奥様、ミキコさんです。 「前回の放送でお忙しいこともあってあまり体を動かせていないというお話をされていましたが、白川先生には趣味のようなものはないのでしょうか? 忙しいとは思いますが、うまく時間を作って何かやっていないと息が詰まりますよ〜(笑)」と書いてあります。 |
白川 | いろいろ趣味はありますけど、一番反省していることは … 私は本当は、運動は好きなんです。それも、激しい運動じゃなくて、最近はウォーキングでいいんですけどね。結構、ウォーキングやって体重も減らしたことがあるんですが、それが、殆ど最近やってないので、ちょっと太り出してきたんです。 |
増山 | 運動じゃない趣味というのはあるんですか? |
白川 | 映画を見たり、あるいは、友達と麻雀をしたり。ほかにも、テレビを見るのが好きですね。ただ、最近、面白いものがなくなってきたね。 |
増山 | 色々、趣味をお持ちなんですね。 |
白川 | 極めて俗人ですから。世の中で楽しいことは、山ほどあります。 |
増山 | …と、いうことです、ミキコさん。宜しいでしょうか。 続いて、こちらのメールです。江東区の、ラジオネーム 本の虫さん。 「私は、冬になると外に出るのが億劫になって、家で本を読むことが多いんですが、白川先生も、きっとたくさんの本を読まれていると思います。これまでに読んで感銘を受けた本や、思い出に残っている本はありますか?」 |
白川 | 法律の本は、いっぱい読みました。ただ、いわゆる趣味で、あまり…本を読むのは、必ずしも好きじゃないです。 僕は、やはり映画とか、映像の方が多かったですね。何故かというと、例えば、「若きウェルテルの悩み」を読んだら、今は勉強なんてすべきじゃない、と。今は恋愛だと、ものすごく影響されるんです。だから、一つの小説を読むと、半年とか一年間、人生が変わるくらいなもんだから。そんなに私は、世界の名作というものを山ほど読めるという、そういう人間じゃないんです。 |
増山 | 何か映画で、特にお好きだというものはありますか? |
白川 | それはまた、山ほどありますね。しかし、結局、あらゆる映画の中で、やはり映画作りの原点は、黒澤明の「七人の侍」。だから、「七人の侍」を、世界の監督達は、黒澤の一番いい映画として …… それから影響を受けたという映画は、いっぱいありますね。いずれにしろ、僕は映画世代ですから、そういう名作は、何度も何度も見ました。 |
増山 | 今日は、番組に寄せられた債務整理に関する相談にお答え頂くのはもちろん、今年に入って、色々なニュースが既にありました。白川さんが気になった、ニュースや話題について色々とお話を伺っていきたいと思います。 白川さん、最後までどうぞ宜しくお願い致します。 |
白川 | こちらこそ、宜しくお願い致します。 |
増山 | ではここで、一曲、お聞きいただきましょう。最初の曲です。堺正章さんで「街の灯り」。 |
(♪) | |
(CM) | |
白川 | あらためまして こんばんは。白川勝彦です。 |
増山 | ニッポン放送の、増山さやかです。 この時間は「白川勝彦の前向きライフ」。白川勝彦法律事務所・所長の白川勝彦さんと一緒に、人生を前向きに過ごすためのヒントについて、お話ししていきます。今日は、白川さんが、今年に入ってから気になったニュースや話題について伺っていきますが、まずはコチラです。「昭和の大横綱、大鵬さんが死去」。 大相撲史上最多の32回の優勝を誇り、昭和の国民的ヒーローとして活躍された、元横綱・大鵬の納谷幸喜さんが、先月19日に亡くなりました。72歳でした。白川さんももちろん、大鵬さんのご活躍は、ご覧になっていましたよね。 |
白川 | そうですね。大鵬さんの前の非常に人気のあった横綱というのは、栃若時代と言われた、栃錦と若乃花なんですね。 僕が住んでいた新潟では、その頃、テレビが映らなくて、栃若時代というのは、あまりテレビで見ていないんです。むしろ、映画館に行ってニュースの大相撲特集があったくらいで、そういうので見たんですけど。 大鵬さんの時代から、新潟の自宅でテレビで見られたんです。やはり、テレビで見た横綱というのは … テレビというのは凄いんですね。一体感が出てくるんです。そういう面では、大横綱であると同時に、本当に大相撲になれば必ず見ていたという意味では、私たちの横綱だなというのが、私にとっては大鵬さんでしたね。 |
増山 | ものすごく強かったんですよね。 |
白川 | 強いというよりも、豪快なのは、むしろ柏戸さん。負けないのが、大鵬さん。 |
増山 | 両方が強くて、競っていた、と… |
白川 | 柏鵬時代と言われたくらいで。だから、相撲通に言わせると、大鵬さんの相撲は面白くないという声もあったんですよ。それに対して、柏戸さんは、電車道でぶつかって相手を倒してしまうという、豪快さがあったんです。それにしても、大鵬さんというのはやっぱり、私たちにとって忘れられない横綱であることは、間違いないですね。 それだけではなくて、私は、趣味の中のひとつは大相撲なんです。これは、必ず見るんですけど。 歴代の横綱の中で、3人の横綱、この記録だけは破って欲しくないという、3つの記録があるんです。まず、なんといっても第1は、双葉山の69連勝。この前、白鵬が63連勝までいったかな? しかし、やはり越えられなかったですね。次に破って欲しくないという記録が、32回の幕内優勝の歴史ですね。千代の富士さんが、31勝までいったんですが、やはり超えられなかったし。大相撲ファンとしては、破って欲しくないという気持ちもあるんですね。 もう一つはなんだか、知ってます? |
増山 | 分かりません。 |
白川 | 北の湖の … 21歳1ヶ月で横綱になったのかな? … 大鵬さんも若くしてなりましたけど。今のところ、史上最年少横綱なんです。これも、貴乃花が超えそうになったんですけど、越えられなかったんです。この3横綱の3つの記録は、大相撲ファンとしては、破って欲しくないと。 |
増山 | いつか、この記録を破るくらいの強い力士が出てくると、それなりに相撲界も盛り上がりますよね。 お知らせのあと、白川さんに引き続き、気になる話題、まだまだ伺って参ります。 |
(CM) | |
増山 | 「白川勝彦の前向きライフ」。今日は、白川さんが 気になる話題について、お話を伺っています。 続いては、コチラです。「アメリカ オバマ大統領、2期目がスタート」。 先月20日、アメリカのオバマ大統領が就任宣誓を行い、政権2期目をスタートさせました。翌日の就任演説では、「われわれの旅は未完だ」と表明。4年前に掲げた「チェンジ(変革)」の実現に向け、社会の分断を乗り越え、結束するよう国民に促しました。 白川さんは、オバマ大統領の2期目のスタートは、どのように思われていますか? |
白川 | 大変大きなニュースで …… ただ続いたからというのではなくて、日本人はもっと、オバマさんがなぜ再選されたか考えたほうがいいと思っています。 そんなことで、今日は話したいと思っていますが、いずれにしても、去年から今年にかけて、非常に世界中で大きな政権交代がありましたよね。近くでは、秋ですが、胡錦涛さんから習近平さんに替わりましたね。国家主席が。それから、となりの韓国では、イ・ミョンバクさんからパク・クネさんに替わりました。これは、2月25日に就任式があります。もちろん、アメリカでは去年の秋にオバマさんが勝って、今度第2期目の就任式があったんですけど ─ ちょっと、それよりも … 夏頃でしたか、フランスではサルコジ大統領が敗れて、オランドさんが首相になりましたよね。 いずれにしても、日本にとって関係の深いところで、大きな政権交代がありました。その中でも、我が国にとって一番関係の深い ─ 同盟国と言われているわけですから、アメリカの大統領選挙について、ちょっと、オバマ大統領が再選された意味を考えてみたいと思うんです。 選挙制度の関係で、投票人の数は大差がつきましたよね。オバマ圧勝と言われたんですが、各選挙区で選ばれた実際の国民の投票の差でいいますと、本当に、ごく僅かな差なんです。稀に見る大接戦だったんじゃないでしょうか。 しかも、これの違うところは ─ アメリカの共和党と民主党の戦いは、いつも生半可じゃないんです。去年の12月にあった日本の選挙は、政党はいっぱい出たけど、ボクシングを例にとれば、ヘビー級のタイトルマッチ、という感じが … しましたか? 色々出たし、色々言われているけど、結局、何と何がぶつかり合っているのか、あまり分からなかったんじゃないですか? それが結局、国民から見たら、選択しろというけど何を選択したらいいのかと、極端に投票率が下がりましたよね。 そこにいったら、アメリカの民主党と共和党との戦いは、いつもそうですが、ボクシングでいけば、ヘビー級のタイトルマッチみたいにガチンコの勝負なんです。しかも、極めてわかり易いテーマでもって、厳しい論争をするんです。例えば、今回だって、いわゆる国民皆保険というのが是か非か、と。もちろん、貧しい人たちは、公的な保険はあって欲しいという主張がありますが、一方では、民間の保険に入っている人たちが多いから、そっちの保険料が上がったりするから、国民皆保険は反対だと言ったりするんですね。そんなこと、日本で考えられます? |
増山 | 全然違いますよね。 |
白川 | それから、税金でも、共和党の方は「減税をしろ」と。一方、オバマさんの方は、「金持ちからもっと税金を取るべきだ」と。真っ向から対立するわけですね。 それから結婚でも、同性婚を認めるか認めないかみたいなことで、ガンガンとやりあうわけです。他にも色々ありますけど、そういう面では、例を捉えるならば、ボクシングで言うなら、ヘビー級のタイトルマッチの感じがするんです。 私はもともと ─ 今日の中心的なテーマになりますが ─ リベラル派ですから、前回の選挙から、オバマさんには、心情的に応援してました。今回も、なかなか厳しい戦いになるんじゃないかと思っていましたが、よくぞ勝ったと、私は思っています。そして、それはアメリカ国民にとっても、世界にとっても、オバマさんが再選でよかったんじゃないかと、私は思っているんです。 さて、アメリカのリベラルのことを話そうと思うんです。基本的には、アメリカの政治は、共和党は自由主義政党です。一方、民主党は、リベラルと呼ばれているんです。しかし、民主党も間違いなく自由主義政党だけど、リベラルの政党だと言われているんです。それが、アメリカの二大政党なんです。 オバマはもちろん、昔からデモクラティック ─ 民主党で活躍したんですが。代表として選ばれたんですが、オバマさんは、同じ民主党の中でも、リベラル色の強い大統領と言っていいんじゃないでしょうか。それは、オバマさんの生まれ・育ち … それだけでなくて、現代のアメリカの矛盾が、オバマ大統領の政策をリベラルにしなければならないという ─ そこに、一番の大きな理由があると思うんです。 リベラルというと、リベラリズムの形容詞でしかないんですが、だから、リベラル=自由主義と言ったのでは、本当のリベラルがなんだか分からないんですね。それで、私なりに整理すると、共和党というのは、同じ自由主義政党であることは間違いないんだけど、伝統的な ─ 言い方を変えれば、古典的な自由主義をかなり重視する人たちの集まり、と。それに対して民主党は、自由主義政党であることは間違いないんだけど、伝統的な自由主義を、少しは変えていかないといけないだろう、と ─ そういうモノの考え方の人の集まりです。だから、同じ自由主義の中でも、色合いが違う、と。時には、全く正反対の党じゃないかと思う時があるんだけど、どちらとも、自由主義政党であることは間違いないので。 そのへんが、わが国ではリベラルというものを、ちょっと理解するのに分かりにくいところがあるんですね。ちょっとややこしくなってきたから、次に述べてみたいと思います。 |
増山 | さらに教えてください。ここで、一曲お送りしましょう。ジョーン・バエズで「勝利を我らに」。 |
(♪) | |
増山 | では、白川さん、先ほどのお話の続きを。 |
白川 | アメリカの政治の歴史を見ると、自由主義政党が、20世紀に入ってから二つなんですね。共和党と民主党と。もちろん、アメリカにも、社会主義政党や社会民主主義政党もあることはあったんですが、それが主流になることは、ありませんでした。 そういう意味では、アメリカという国は、自由主義の国、自由の国といっても、私はいいんじゃないかと思っています。 従って、共和党と民主党というのは厳しく争ってきましたが、自由主義というモノの考えなんだけど、そのあり方をめぐる戦いといっていいんじゃないかな、と思うんです。もう一度繰り返しますと、共和党は、伝統的・古典的自由主義を重視する、と。それに対して、民主党は自由主義そのものは決して否定しないけど、古典的な自由主義のままでは、社会の矛盾が解決できない、と。ただ、場合によったら、これは自由を制限するということもやる政党ですから。 共和党と民主党のモノの考え方が違うのは、事実です。ただ、だからといって、民主党を自由主義政党でないと言う人は、いないんじゃないでしょうか。 ここから、ちょっと私の独断も含めて、分かりやすく話をする意味で言ったんですが。よく、リベラルと、日本でも使われるときもあるんですが、それを理解してもらうために、説明するのですが … |
増山 | お願いします。 |
白川 | 自由主義というのは、18〜9世紀くらいから出てきたんですが、自由競争を通じて、社会を進歩させていくというようなことの考え方で、元々、進歩的な考え方なんですが。 1919年に、ロシアで社会主義革命がおきましたよね。あの広大なヨーロッパに近い国で、社会主義革命がおきたわけですから。もちろん、貧富の差はロシアだけじゃなくて、他の国にもあるわけです。だから、ソビエト・ロシアが誕生してから、ヨーロッパの自由主義者は、その社会主義というものを頭に置かなかった、あるいは、自由主義競争の結果、貧富の差が出てくるということは、想定しなかったら、自由主義政党としては、国民の指示は受けられなかったんですね。だから、ロシア革命が起きてからの自由主義というのは、むき出しの自由主義ではダメだよ、と、自由主義者としても、みんな、頭に入れていたのではないでしょうか。 自由主義というモノの考え方が生き延びるために、あるいは、自由主義社会を永続させるためには、むき出しの自由主義のままではダメだよという考え方を、私は、リベラルというものが、一番正しいんじゃないかと呼んでるんです。それだけでは、ちょっと分かりにくいので、私は、社会的な構成を重視する自由主義を、リベラルと呼んだらいいんじゃないかなと、いつも言っているんです。社会的公平の自由主義ですね。 一方では、自由主義そのものに対して、反対の考え方があるわけです。それが、例えば社会主義もそうですし、社会民主主義というのもありますね。そのような二つの考え方があるのですが、社会民主主義者の主張することと、リベラルの人がたまに、似たようなことを言うんです。同じなんじゃないかと言われるんですが、それはしかし、やはり違うんです。やっぱり、リベラルというのは、どこまでいっても自由主義なんです。 ただ、自由主義を行き過ぎちゃうと、「こういう問題があるから何らかの制限をしなくてはいけない」というのが、リベラリズムの基本なんですが ─ 社会民主主義とか社会主義は、自由主義でいったならば、貧富の差が出てくるのは当たり前だろうと。だから、最初から世の中というのは、政府が強力にコントロールしなくてはいけないんだと。そういう立場に立つ人が、社会主義であったり、あるいは社会民主主義なんですね。 ですから、一見似たようなことを、現実の問題ではリベラリストもリベラリズムも主張するし、社民党もいうんだけど、その一番の根本が違うというのが、リベラリズム。日本人には、よく分からないところなんですね。 歴史で決めると、さっき言った通り、アメリカでは、社会主義とか社会民主主義というのが大きな政党になることはなかったですが、ヨーロッパでは、リベラルなんてのは出ないで、むしろ、自由主義に対して ─ フランスなんか典型ですが ─ 社民党とか社会党が誕生して。この、社会民主主義と自由主義との戦いで、政治が動く、と。むしろ、ヨーロッパは、そういう政治の流れですね。そういうのが、リベラルと自由主義。あるいは、社会主義の相互の関連で見ると、だいたい、理解出来るんじゃないかと思います。 ところで、日本ではどうかというと、日本では、リベラルな政党というのは、残念ながらまだ出来たことはないですね。自民党というのは、リベラル・デモクラティック・パーティと言うし ─ 私もそこにいたんですが ─ 残念ながら、リベラルな政党とは、ちょっと言えないかなというんですが。ただ、自民党の中には、リベラル派がいっぱいいたことは事実です。 だから、私が現職の国会議員の時に、よく、自民党リベラル派の国会議員とも言われました。私は、そう言われることが嬉しかったし、誇りに思っていました。そんなのが、日本における自民党の中の一部に、多数はではないけど ─ しかし、大平正芳さんは、そのリベラル派の代表的な政治家ですけど ─ 時には、総理になることもあったわけですね。それが、日本におけるリベラル。小さいけど、日本にもあったということです。ちょっと難しいけど、なんとなく分かりました? |
増山 | …なんとなく、分かりました。 |
白川 | フィーリングでいいんです。 |
増山 | 今日は、白川さんの気になる話題について、お話を伺っています。 |
(CM) | |
(白川勝彦のラジオ永田町徒然草) | |
増山 | このコーナーは、自治大臣として国会で活動され、現在は剛腕弁護士として活動されている白川さんに、国会や政治、社会について思うことを、徒然なるままに語っていただくコーナーです。 白川さん、よろしくお願い致します。 |
白川 | こちらこそ、よろしくお願い致します。 |
増山 | 今度は、昨年誕生した「安倍新政権」について、お話を伺いたいと思います。 去年12月に行われた衆院選挙で、自民党が圧勝して誕生した、安倍政権。先月の衆院本会議で行われた、安倍総理の所信表明演説では、「日本経済」「震災復興」「外交・安全保障」そして「教育」の4分野を挙げ、「危機突破にまい進する」と表明しました。 安倍政権が誕生して、1ヶ月半。支持率もあがって、順調な滑り出しと思われますが、いかがでしょうか? |
白川 | 株も上がっているし、円安になっているし … ある面では、いいのかもしれませんが。 ただ、一時的な現象だけでなく、僕は、最近の日本の政治の現象を見ていると、正直言って、暗澹たる気持ちになるんです。あまり楽観的に、好意的に見れなくなっています。 どうしてかというと、安倍さんは危機突破と言っていますが、私が国会議員をやっていた20年前くらいというのは、一億総中流時代と言われていました。本当かと、私はよく言ったんだけど、多くの国民が、「俺は間違いなく中流だ」と。なかには、中の中だという人が多かったですね。しかし、今はとてもそのようなことを言う人はいませんよね。年収200万円以下の人が、一千万以上いる、と。あるいは、非正規労働者が3分の1いる、と。それから、生活保護受給者が220万位いる、と。いずれにしても、貧富の差が大きくなってきましたね。 だから、さっき言った通り、なぜオバマさんが勝ったかというと、アメリカも貧富の差が出てきたんです。だから、厳しい戦いだけど、オバマが勝ったんです。本当は、今こそ自由主義の弊害が出てきているんだから、こういう時こそ、リベラルが頑張らなくてはいけないのに、リベラルなんかどこにいっちゃったんだという感じですよね。それが、僕が暗澹たる気持ちになるというところです。 |
増山 | 安倍晋三さんという方は、どんな方ですか? |
白川 | 当時、僕は5回生くらいだったかな。安倍さんが1年生で来た時から、よく知っています。育ちのいい、良いところのボンボンさんであることは、間違いない。 |
増山 | 安倍総理も、リベラルというように言われますが … |
白川 | 安倍さんは、自らをリベラルと言ったこともないし、人からリベラルと言われたこともないでしょ。どこかで、安倍さんは「リベラルというのが、一番いけないんです」と言っているくらい、リベラルの対極にある人です。私よりもかなり若いんだけど、若いからといって、進歩的であるとは限らないんですね。ですから、僕なんかよりはるかに、戦前派・改憲派のような感じがします。 |
増山 | 白川さんとは、ちょっとお考えが違う? |
白川 | 全然。対極ですね。 |
増山 | 現在の自民党と、白川さんがいらっしゃった時代の自民党は違いますか? |
白川 | これは、一般の人には、同じ名前だし、人数も同じだと思うけど、私のようなリベラリストからいったら、「平成12年に、自民党からリベラル派が切って捨てられた」と思って、間違いないんじゃないでしょうか。 ですから、昔の自民党の中には、リベラル派が厳然として存在していました。少なくとも、50人くらいの規模で。今は、自民党の中には、リベラル派なんて居られもしないし、逆に、居られない時代になっちゃった … んじゃないかな。同じ自由民主党という名前なんですが、リベラル派という「自由主義も、時には変えなければいけないところがあるよ」という人たちがいる自民党と、そういうものが全然いない自民党は、別の政党と言ったほうがいいような気がします。 |
増山 | そんなにですか。そして、「憲法改正」。これも、視野に入れている自民党ですが、憲法改正については? |
白川 | 安倍さんは、改憲派の筆頭ですよね。さっきからずっと話している、リベラリズム ─ 自由主義というのは、日本においては、いつから基本的な政治思想になったかというと、これはやはり、昭和22年に施工された、今の日本国憲法 ─ 俗に昭和憲法と言われるものが、初めて我が国に自由主義というものを、ドカンと据えたんですね。 改憲派の人たちが一番変えたいと思っているのは、みんな、憲法9条だと思っているかもしれないけど、実は、「昭和憲法が保障した自由主義」なんです。それに対して、改憲派の人たちは、非常な嫌悪感を持っているんです。ただ、その自由主義を否定したら、日本はとんでもない方向に行くでしょうね ─ と、私は見ているんです。 |
増山 | これからの安倍新政権に期待することがあれば、教えて下さい。 |
白川 | 期待することはないけど、少なくとも、悪いことはしないでくれ、と。憲法改正だとか、そんなことをしたら、その時は、あなたが終わるだけじゃなくて、自民党の支持率も … その時は、国民は絶対に反対するよ、と。 少なくとも、憲法改正するような危険なことはしないでくれというのは、僕の望みですね。また、国民は、その目で安倍政権と対峙しなくてはいけないと思っています。 |
増山 | 具体的に望むことや、期待することはあまりない? |
白川 | 株を上げるなら、どんどん上げてもらったって結構だし、下がるか下げられるかだって、ものには限度がありますから、そう政治家の気持ちで、上がったり下がったりするもんじゃないです。 一番大事なのは、「国を運営する基本的な哲学だけは、ちゃんと守ってくださいよ」と。国民はもう、自由主義 ─ リベラルな方向の自由主義を望んでいるんだから、と私は思います。そういうようなことを、かつては一生懸命述べたんですが … 今は、週に一回くらいですが「永田町徒然草」という、私のウェブページで、書いてありますから。「永田町徒然草」と入れれば、毎週一回くらい、私のエッセイが出てますから、お読みいただければと思います。 |
増山 | 「永田町徒然草」、検索してみてください。以上、「白川勝彦のラジオ永田町徒然草」でした。 |
(CM) | |
(白川勝彦 ラジオ法律クリニック) | |
増山 | この時間は、「白川勝彦 ラジオ法律クリニック」と題して、弁護士歴41年、白川勝彦弁護士に、皆さんから寄せられた法律相談にお答えいただきます。 早速、リスナーの方から届いたメールをご紹介しましょう。足立区の、37歳の主婦の方です。 「今、主人のギャンブルによる借金で離婚を考えています。300万円程度の借金を知っていますが、本当のところは教えてもらえていないので、全体の金額は分かりません。今後のことを考えて離婚をしようと思っているのですが、離婚後に私や子供たちに借金の返済が迫られるようなことはないでしょうか?」大変ですね。 |
白川 | 全体は分からないと言っていますが、300万円だけでも。年収がどのくらいか分かりませんが、300万円の借金は、普通のサラリーマンにとっては、大きな借金じゃないでしょうか。 |
増山 | これは、離婚をしてしまえば … どうなんですか? ご主人の借金とも関係が無くなっちゃうという風に、考えていいんですか? |
白川 | これは、離婚をしようがしまいが、あくまでも自由主義が大原則ですから。あくまでも、借金したのはご主人さんですから。奥様や子供さんには、関係ないことです。 |
増山 | はなから関係ないこと … |
白川 | 保証していれば、別ですが。妻だから払えとか、子供だからということは、ありません。 |
増山 | じゃあ、いわゆる借金取りの方が来て、奥さんやお子さんの所にいって、なんてことは? |
白川 | たまたま行った所に奥さんがいたら、顔を合わせることになるでしょうけど、だからといって、奥さんに払えという筋合いは、ないですよね。 |
増山 | そうですか。こういった、ギャンブルで出来た借金というのは、債務整理が難しいと聞いたことがあるんですが、これは本当なんですか? |
白川 | それは、破産の場合ですね。破産の場合は、ギャンブルで作ったから自己破産させて下さいと言われても、裁判所は、「ちょっとやれませんよ」ということはありますが。ただ、借金を整理する自身は、金の使い道は何も関係ないですから。普通の任意整理だとか、あるいは個人再生の場合だったら、別にギャンブルで作った借金でも、関係ありません。 |
増山 | 「債務を整理することは、できますよ」ということですね。借金を理由に離婚することは、できるんでしょうか? |
白川 | 多額の借金があるから離婚というのは、ストレートには民法には書いてません。ただ、借金があると、実際問題、婚姻生活をするお金を出してくれないとか、困ったことが起きるんじゃないでしょうか。そういうのを踏まえて、離婚事由の一つである「その他、婚姻を継続し難い重要な事由がある場合」の一つに、こういうことが入るということは有り得ます。 |
増山 | この奥様の相談は、割と、どうにかなりそうですよね。 |
白川 | そうですね。一番心配されているのは、こんなにいっぱい借金を作って、私や子供たちにくるんじゃないか、と。あるいは、将来もくるんじゃないか、ということに関してですが、それは、「借りたのはご主人さんですから、奥様や子供さんには関係ないですよ」と、いうことは言えますね。 |
増山 | そこのところは、ご安心くださいということですね。 では、もう一通ご紹介しましょう。今度は、横浜市にお住まいの、41歳の男性の方です。 「私には今、消費者金融数社から、250万円程の借金があります。半年前に派遣の仕事が終わり、現在は無職のため、返済に困っています。就職活動はしていますが、今のご時世、なかなか決まらないのが現状で、借金もまったく減りません。仕事がなく、先も見えない状況の中で、債務整理をすることは可能でしょうか?」 |
白川 | 債務整理というのは、三つの方法があるんです。 一つは任意整理というやり方。二つ目は個人再生。 一番苦しい場合は、自己破産を申し立てるというケースなんですが。自己破産の場合だって、弁護士費用はかかりますけど、色んな方法がありますので。 収入がなければ自己破産できませんよということは、ありません。むしろ、収入がないから結果として払えない、と。払えないから、自己破産をしたいとか、個人再生だとか、あるいは任意整理ということにいくわけですから、収入があるかないかは、債務整理には関係ありません。そのへんのことは、よく弁護士さんと相談すれば、一番適切な債務整理の方法を考えてくださるんじゃないでしょうか。 |
増山 | 「無職でも大丈夫」と。でも、消費者金融としては、返済がなくなるということは、ちょっと納得ができないですよね。 |
白川 | そういうことを含めて、返済したくてもできない場合は、もう破産という方向に行くわけですから。ケースによって、弁護士が一番最適な道を考えるということになります。 |
増山 | 今、仕事を探しているそうなんですが、もし仕事がこの方に見つかって、定期的な収入が見込めるようになったら、状況は変わるんですか? |
白川 | 状況も変わるし、とるべき方法が、自己破産じゃなくて個人再生の方でいくか、任意整理でもできる、と、そっちに変わるってだけの話です。 |
増山 | いずれにしても、きちんと弁護士さんに相談にいくのが … |
白川 | 弁護士が、適切な方法を考えてくれますから。 |
増山 | 相談する際の費用なんですが、まちまちですか? |
白川 | 費用そのものは、事務所によって違いますが、弁護士は依頼者の状況をよく考えて、無理なく払える中で、大体やりますから。みなさんは、弁護士費用が高いと考えるんですが、それは、実際と違います。弁護士がみんな、考えてくれます。 |
増山 | そうですか。この方は … 今は払えない状況ですという方でも、相談次第では大丈夫と。 |
白川 | 相談は、どこの事務所もお金なんて取りませんから。まず、相談に行ってみて、みんな実情をきちんと話したら、必ず、ちゃんとした弁護士さんなら、その人に一番ふさわしい方法を選んでくれるはずです。 |
増山 | 心強いですね。分かりました。ありがとうございました。以上「ラジオ法律クリニック」でした。 では、ここで曲をお送りしましょう。ルイ・アームストロング「この素晴らしき世界」。 |
(♪) | |
(CM) | |
白川 | お送りしてきました「白川勝彦の前向きライフ」。そろそろ、お別れの時間となりました。 |
増山 | 去年の11月から3回にわたってお送りしてきましたが、これまでの放送を振り返って、いかがでしたか? |
白川 | 1時間あると、色んな述べたいことを述べてたりして ─ 上柳さんの時の、「ごごばん! 法律クリニック」とは、またちょっと違いますね。 |
増山 | 時間がたっぷりありますからね。一応、この番組は今日が最後となりますが、また、ぜひ一緒にお仕事ができる機会があると、いいなと思います。 |
白川 | 本当に、増山さんにも一言御礼したいのは、上柳さんの「ごごばん! 法律クリニック」でもアシスタントとしてお手伝い頂いて、今回は、3回に渡る、かなり個性のある番組のパートナーを務めて頂いて、ありがとうございます。 また、拙い話しですが、本当に多くの皆様から、長時間お聞きいただいて、大変感謝致します。 色々、どの番組でも述べた事なんですが ─ 自由と平等といいますが、自由であれば、残念ながら平等でなくなるんです。「平等にやると、自由がなくなる」と。ある意味では、対立する概念ですね。ただ、普通の人間は、自由も望むし平等も望む、と。従って、リベラルも、あるいは、我々が法律で言うリーガルマインドも、「自由も大事だし、平等も大事だし」。だから、こっちを取るからこっちを捨てるんじゃなくて、その両方をうまく加味した解決策はないのかというのが、リベラリストとしての一番難しいところです。 それは、教科書はありません。具体的な問題を目の前にして、一人の人間として、これはこういう風に解決したらいいんじゃないか、と。解決するのは自分ですから。別に、誰かに言うわけじゃないですから。自分の全人格を持って、「これが、私は正しいと思う」と。責任をもって、一つ一つ解決するというのが、リベラリストとしての生き方だったし、今の日本の法律も、リーガルマインドで大事にすることなんじゃないかなと、私は思っています。 |
増山 | 前向きに、前向きに、ね。「白川勝彦の前向きライフ」。最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございました。 |
白川 | ここまでのお相手は、白川勝彦と … |
増山 | ニッポン放送の増山さやかでした。 |
増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | TOP[t] | 第1回 | 第2回