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白川勝彦の世の中つれづれ談義 2010年10月9日 土曜日 (第15回)
自由主義社会には遠い中国の対応
話者名 | 話の内容 |
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自由主義社会には遠い中国の対応 | |
小泉 | 今日から体育の日まで、また三連休ですね。 |
白川 | そうですね。昔は盆と正月しか休まなかった。それも三日くらいでしたから、それと比べるとまとまった休みが多くなりましたね。 正社員の人なら休んでも給料はもらえます。一方、もう全勤労者の三分の一に達している非正規雇用者は、休んでいたらお金になりません。そういう人にとっては休みが増えることがほんとにハッピーなのか、ですよね。経営者にとっても、休みで仕事をさせられない。それでも社員に賃金を払わなければならない、それもたいへんなことですよ。三連休になると、いつもそんなことを考えさせられます。 政治が休日を増やしたわけですが、そうしたらどういう影響が出るかについて考える必要がありますね。 今回は、月曜に体育の日があるから三連休ですが、私は大学一年の時に東京オリンピックがありました。昭和39年、1964年ですよ。その年の10月10日に東京でオリンピックが開催されたのを記念して、体育の日ができました。日本人にとって、戦争に負けて19年しか経たないのに、オリンピックを主催できたというのは、多くの日本国民にとって感動的でしたね。自信につながりました。 代々木にスタジアムなどの主要施設がありまして、私がいた駒場の東大グランドも各国選手の練習場として使われていました。ですから学校にいても落ち着かない。ということで、私は郷里に帰って、オリンピックはテレビで観ていましたよ。今から考えると随分もったいないことをしたと思いますが。いずれにせよ、このオリンピックで日本人は大きな自信を持ちました。 そして、昭和45年には大阪で万博が開かれました。大阪万博は日本経済発展を象徴的するイベントであり、これを機に、先進国の仲間入りをしたと認められましたね。 |
小泉 | オリンピックや万博は発展の象徴と言えるものですね。 |
白川 | 二年前に北京オリンピックがあり、そして今年は上海で万博が開かれましたね。この二つの出来事で中国人も自信を持ちましたね。 それは経済のデータにも表れています。今年中にはGNPで日本を抜いて、世界第二位の経済大国になると見られています。 最近、尖閣諸島の日本の領海で中国漁船が巡視船に衝突し、日本と中国の関係が緊張しましたね。中国の強硬姿勢に対し、日本人は「中国は尊大だ」と思い、日本政府の対応は「卑屈だ」と思ったのではないですか。私もそういう感じも持ちました。中国のめざましい経済発展を見て、日本は超えられてしまった、もう日本はダメになっていくのではないか、そう思う人が多いのでは。でも、あの程度の問題で、中国が大上段に構えて対応するのを見て、私は「中国はまだまだ弱い国だ」と思いましたね。 どういうことかと言うと、政治の目的は「さわやかな秋晴れのような社会を作る」ことですね。それが自由主義社会、民主主義社会の政治のあり方です。政府が強硬姿勢を取らなければならない国は弱いですよ。中国とか北朝鮮のように、脅しや世襲がまかり通る社会は、決して自由主義とは言えません。日がはしなやかで強い自由主義国家になったことに国民はもっと自信を持っていいと思いますね。 |
風邪ひきに冷や水の総量規制 | |
小泉 | 番組の後半は、お金に関係する法律や生活経済の悩み事について、白川さんからアドバイスをいただきます。 日本はしなやかで強い国になったというお話でしたが、それにしては、デフレが続き、経済は低迷していますね。 |
白川 | それと関係するのですが、今年6月に貸金業法が改正され、年収の三分の一以上借金をしている人は借金ができなくなりましたね。業者もそれ以上は貸してはならない、その「総量規制」についてお話したいと思います。 日本経済がこれほど長期に低迷している原因の一つはデフレですね。なんとかこのデフレを克服していかなければならない。そのためには、政府が様々な景気対策を講じなければならない。 4兆数千億の補正予算が組まれたのもその一つです。赤字国債を大量に発行していなければ、もっと大型の景気対策がとれると思いますが、これ以上国債を増発すると大きな影響が出ます。でも政府の経済対策は縮小の方向に向かってはならない。さりとて、国債を大幅に増やすこともできない。だからといって、景気対策を取らないと、カゼをひいている人にさらに冷たい風を送ることになりますね。 この三分の一という総量規制は、本来温めてあげなければならないにもかかわらず、明らかに国民を冷やしたものですね。だから、裁判所への破産申し立て件数も、昨年よりもかなり増えていますね。 多重債務者を作らないという、法改正の目的自体には賛成しますが、でも時期によりますよね。これだけ賃金も上がらない、雇用情勢も悪い中で三分の一以上を貸さないというのは、これまで貸した金をすべて吸い上げるということですよね。カゼの患者に冷や水を浴びせるやり方ではないですか。数兆円のお金が動かなくなるわけですから。 財政の厳しい中で、政府が十分な景気対策ができないということは理解しますが、少なくとも逆のことをしてほしくない。 秋空のようなさわやかな社会を実現するのが自由主義国家の政治だと言いましたが、土砂降りの社会にはしないでもらいたい。これだけはやってほしくないと思っていることだけは、やらないでほしい。国民のために何をすべきでないか、政治家はそれをしっかりと考えるべきでしょうね。 |